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2003年10月3日
紙に印刷された情報の追跡を可能にする、
透かし強度を調節可能な二値画像電子透かし技術を開発
日立製作所システム開発研究所(所長:小坂満隆/以下、日立)は、紙に印刷された情報の追跡を可能にし、かつ透かし強度を調節可能にする、二値画像電子透かし技術を開発しました。
本技術は、日立がこれまで開発してきた濃淡画像向け電子透かし技術を活かしながら、これまで認知科学で実証されてきたゲシュタルトの法則(*)などの様々な人間の視覚特性を利用し、二値画像特有の「乱れやすさ」「改変のしやすさ」といった特性を定量化し、画質の劣化を回避しつつ、必要な強度で透かし情報を埋め込むものです。
この技術を利用することによって、コンテンツの目立たない場所に必要な強度で識別情報を埋め込むことができるほか、通常のレーザープリンタで印刷した紙や、光学コピー機による白黒コピーを経た後からも、埋め込んだ情報を検出することができます。
これまで、企業内の機密文書などは、いったん紙にプリントアウトされた後、紙の情報流通経路を追跡することが技術的に困難でした。その対策として、作成者や配布先などの識別情報をコンテンツ自身に埋め込む電子透かし技術が注目されています。電子透かし技術は、コンテンツに、人間の目ではわからない程度の微小な変化を加えることにより、情報を埋め込み、専用ソフトを用いることにより、埋め込んだ情報を検出する技術です。
特に、紙の印刷でよく用いられる二値画像を対象とした電子透かし技術では、情報が白と黒だけで表現されるため、画質が劣化しないように情報を埋め込むことがきわめて困難でした。また、埋め込む強さを調整することは、これまで不可能でした(例えば、画質をできるだけ維持するように透かしを弱く埋め込みたい、逆に、多少画質は犠牲にしてでも、印刷後にも透かしを取れるように強く埋め込みたいなど)。
この技術の一部は、高知県殿に納品した高知県データ共有型GISシステムにも用いられています。高知県データ共有型GISシステムでは、庁内および市町村等関係機関との情報共有やデータ流通だけでなく、庁外への情報発信として、県民への地図情報の提供などをすべてWebを介して行うことができます(フォーマットはJPEGまたはPNG)。ところが、庁外への情報発信においては、地図情報が庁外で不正流通される脅威が考えられます。そこで、地図情報が庁外に配信される前に電子透かしを埋め込むことにより、地図情報の不正流通を事前に抑止すると共に、事後においても、不正に流通しているコンテンツを発見できるようにしています。
今後、日立では、紙を媒体とした情報追跡、機密情報流出抑止、素材管理など、官公庁、企業などの多様な業務場面への応用を提案してゆく予定です。
(*)ゲシュタルトの法則: |
図形の中に単純な規則性や意味を見いだそうとする心理的機能をいう。人間には、近いものをグループ化して見る、閉じた図形を見出す、同じ性質を持つものをグループ化しようとするなどの性向がある。 |
項目 |
性能 |
挿入情報量 |
64ビット(英文8文字) |
アナログ耐性 |
・ |
普通紙にレーザープリンタで出力し、その紙をスキャナで読み取ることで検出可能(プリンタ、スキャナの解像度は300dpi) |
・ |
出力した紙を、普通のコピー機で再コピー(1、2回程度)しても検出可能 |
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強度調整 |
可能 |
誤検出率 |
10の-6乗程度(理論値10の-11乗) |
原画必要性 |
原画不要 |
埋め込み速度 |
A4サイズで1秒(データの読み込み・書き込みは除く) |
埋め込み領域 |
・ |
平坦領域には透かしを埋め込まない |
・ |
改変が目立ちにくい凸凹部分を改変して透かしを埋め込む |
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検出速度 |
1〜10秒程度(探索範囲・精度による) |
検出領域 |
黒色の濃度1割以上、凸凹している輪郭を含む、5cm四方の領域から検出可能 |
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(注)これらの性能は対象となるコンテンツにも依存します |
■電子透かしを利用したシステムのイメージ |
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■電子透かしの例 |
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以上