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2003年9月1日
建造物の微小振動をLSIの駆動電力に変換する回路の原理実験に成功
ユビキタス時代に向けたパワーフリーのセンサ付きチップへ将来適用
日立製作所中央研究所(所長:西野壽一)は、このたび、外部から電力を供給せずに自給自足で動くセンサチップ(センサネット用端末LSI)の実現を目的として、自然界が持っている振動エネルギーをLSIの駆動電力に変換する電気回路の原理実験に成功しました。建造物に存在する数マイクロメートル(100万分の1メートル)程度の振動を想定した実験により、電気変換効率21%、出力0.12マイクロワット(100万分の1ワット)の発電を確認しました。
来るユビキタス時代には、あらゆるものの情報が把握され、人が意識することなくこれらの情報を交換できる社会が想定されています。その実現方式の一つとしてセンサネットが提案されています。センサネットでは、センサ、信号処理、通信の3つの機能を備えた端末LSI(センサチップ)を配置することによってネットワークを形成し、センシングした情報をネットワークで伝達します。このセンサチップを様々なものに設置するためには、無線通信によるワイヤレス化とともに、パワーフリー化(電源を不要にすること)が不可欠な要件になると考えられます。これまで、センサチップ向けの自家発電方式として太陽電池や温度差発電を利用したものが提案されていますが、どのような環境条件でも使えるオンチップ発電機の開発には至っていませんでした。
そこで今回、センサネット端末LSI用のオンチップ発電機として、建造物の壁面に存在する振幅が数マイクロメートル以下の微小な振動のエネルギーでも電力に変換できる回路を開発しました。開発した内容は以下の通りです。
- 微小振動に共振し、これを電力に変化する回路を開発。この回路を構成する可変容量、電荷輸送回路、タイミング制御回路それぞれの最適条件を見出すことで、発電効率を大幅に向上しました。
- 数マイクロメートル程度の振動とタイミング制御信号を外部から与える仮想的な実験によって、振動エネルギーを電力変換に実証しました。この結果、発電効率21%,電力出力0.12マイクロワットを得ました。
今後は、本実験装置の小型化によるオンチップ化と発電効率向上により、センサネット端末LSIのパワーフリー化の早期実現を目指します。
なお、本内容は、8月25日から韓国ソウルで開催される「国際低電力エレクトロニクス/設計シンポジウム(ISLPED:International Symposium on Low Power Electronics and Design)」で発表する予定です。
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以上
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