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2003年9月1日
 

小型・高速・高精度の指静脈認証技術を開発

―容積を1/3、処理速度を10倍に向上―
 
 
 
  日立製作所 中央研究所(所長:西野壽一)は、このたび、指の静脈パターンを用いて個人を認証する指静脈認証装置の大幅な小型化、高速・高精度化技術を開発し、容積1/3、認証速度、認証精度ともに10倍以上(当社比)という、世界最高レベルの性能を達成しました。静脈認証は各種バイオメトリクス(生体識別)の中で唯一生体内部の、外からは見えない特徴を利用しているため、偽造に強い次世代のバイオメトリクスとして注目されています。今回の高性能化技術によって、入退室管理システム、PCログインなど安全が重視されるフィジカルならびにサイバーセキュリティシステムへの普及が期待されます。

  近年、急速な情報化社会の進展に伴い、企業や自治体等で、個人データ、機密に対する管理意識が高まっています。従来から用いられていたパスワードやIDカードに比べて、指紋、虹彩、声、顔、静脈など「その人にしかない固有の特徴」を用いるバイオメトリクスは、偽造や盗難、紛失、不正譲渡の危険が少なく、より確度の高い個人認証手段として、近年認知されつつあります。当社では、生体情報として指の静脈パターンを用いる新しいバイオメトリクスの研究開発に早くから取り組み、世界で初めて、指の静脈パターン認証に関する論文成果を公表してきました。指静脈認証は、近赤外光を指に照射し、その透過光から得られる指の静脈パターン画像と、予め登録された画像と照合する方法です。今回、その用途の拡大に向けて、従来性能を大幅に改善する、小型・高速・高精度指静脈認証技術の開発に成功しました。

  今回、開発した指静脈認証の高性能化技術は以下の通りです(図 参照)。
(1) 指の個人差に適応したイメージング技術
指は太さなどに個人差があります。また同じ指でも指先と根元ではその太さが異なるため、単純に照射光量を調節しても、指全体の静脈パターンを適切に撮影できるわけではありません。今回、指の部位毎にきめ細かく透過光量を調節するとともに、血管の局所的な変動があっても安定して静脈パターンを抽出する新しい画像処理技術を開発して、より鮮明な静脈パターンが得られるようにしました。
(2) パターン変形を補正したマッチング技術
ユーザの指の置き方によっては、位置ずれだけでなく、指の傾きや拡大率の変化を伴うことがあり、マッチングの精度を低下させる要因となっていました。今回、指の置き方の違いを認識し、指画像を補正して照合することで、ラフな指の置き方にも耐えられるようにしました。

  開発技術を用いた実証実験(対象539名)では、等価エラー率0%(当社従来方式0.3%)となり、大幅な精度の向上を実現しました。またパソコン用CPUで、10,000指登録時、1秒で個人の認証ができる高速処理を達成しました。これらはいずれも、従来比10倍の性能向上に相当します。さらに組込機器用CPUであるSuper Hマイコンへの搭載を行った結果、約1/3の容積小型化を実現しました。

  今後は、今回開発した指静脈認証技術を、重要施設、オフィス、マンションなどの入退管理といったフィジカルセキュリティ分野や、機密データへのアクセス管理、PC端末上の本人確認といったサイバーセキュリティ分野などに適用していく予定です。

開発した指静脈認証技術
図 開発した指静脈認証技術
 
 
以上
 
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