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2003年6月13日
ミリ波車載レーダ用送受信モジュールの小型・低コスト化技術を開発
−セラミック多層基板を採用し容積を1/5に−
日立製作所中央研究所(所長:西野 壽一)は、このたび76GHzミリ波帯車載レーダ用送受信モジュールの大幅な小型・低コスト化を実現する技術を開発しました。従来の送受信モジュールで用いていた金属筐体に替えてセラミック多層基板を採用し、その上にMicrowave Monolithic Integrated Circuit(以下、MMIC)を含む高周波回路部を実装するものです。これにより容積が従来比で約1/5となる小型化を達成するとともに、部品点数の削減や組み立て工程の簡略化により製造コストを大幅に削減できる見通しを得ました。本技術は自動車の安全性を向上させる車間距離制御1)(Adaptive Cruise Control、以下ACC)システムや車間距離警報システム、衝撃緩和システムの普及に道を拓く技術です。
ミリ波帯レーダは波長数ミリメートルの電波(ミリ波)を使って対象物からの反射波を測定し、相対距離や速度等を検知する装置です。近年、自動車のACC・車間距離警報システムなどに用いるために、76GHz(ギガヘルツ:10の9乗ヘルツ)帯の車載レーダが前方監視レーダとして国内外で実用化され始めており、また衝突予知による衝撃緩和システムへの応用も進められています。今後の安全な車社会の実現に向けたこれらシステムの普及には、車載レーダの低価格化が望まれており、このためには心臓部であるミリ波送受信モジュールの小型・低コスト化が必須であると考えています。
当社ではこれまで送受信モジュールの小型・低コスト化に有利な構造として、MMIC(発振器、パワーアンプ、レシーバ)を実装した高周波回路基板と平面送受信アンテナとを、金属ベースプレートの表裏に配置する一体構造を採用しています。この構造の特長をさらに活かして一層の小型・低コスト化を進めるには、現状の送受信モジュールの同軸ケーブル構造やMMIC実装方法を簡素化する必要がありました。そこで今回、セラミック多層基板を用いる新たな送受信モジュール構造を開発しました。技術の特長は以下の通りです。
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(1)セラミック多層基板の採用 |
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金属ベースプレート上に高周波回路基板を貼り合わせていた従来の構造に替えて、セラミック多層基板上に直接MMICを実装する構造としました。配線を多層セラミック基板の各層に立体的に配置する"多層配線構造"により、モジュールの容積を低減し、構造を簡素化しました。 |
(2)ヴィアホールによる高周波信号接続 |
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MMICと送受信アンテナとを電気的に接続する同軸線路構造を、絶縁体に貫通穴を設けて金属を埋め込むヴィアホール構造によって多層基板内に作りこむ技術を開発しました。
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今回試作した送受信モジュールの高周波回路実装部は、外形サイズが縦26mm×横25mm×厚さ3.4mm、重さは3.4gで、容積は従来モジュールの約1/5となりました。また、実装による信号損失は従来モジュールと同等の2dB以下であり、レーダへの適用が可能であることを確認しました。開発した送受信モジュールは、部品点数の削減や組み立て工程の簡略化による大幅な低コスト化が期待されます。さらに小面積の平面アンテナを採用することで小型の広角近距離センサが実現でき、この場合アンテナのモジュール基板への内蔵化も可能です。
今回開発した送受信モジュールは150mまでの前方を監視する従来のACC・衝突警報システム用レーダ製品の低価格化を可能にするだけでなく、自動車の周囲に複数の広角近距離センサを取り付ける全方位監視システムへの応用も期待されます。将来のより安全な車社会の実現に向けた、自動車向けミリ波レーダの応用拡大に道を開く技術です。
なお、本成果は6月8日から米国フィラデルフィア(ペンシルバニア州)で開催されたMTT−Sマイクロウェーブ国際会議(IMS2003)にて、6月12日に発表しています。
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図: 送受信モジュール断面構造と外観写真
縦26mm×横25mm×厚さ3.4mm
重さ3.4g | |
■注釈 |
1)車間距離制御(Adaptive Cruise Control:ACC): |
自動的に車間距離と走行速度を調整する機能。 |
以上
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