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2003年5月16日
株式会社 日立製作所
日立マクセル株式会社
 

テラバイト級の多層光ディスク基本技術を開発

−電圧印加により透明化するエレクトロクロミック材料を記録層に採用―
 
 
 
  株式会社 日立製作所研究開発本部(本部長:中村 道治)は、このたび、日立マクセル株式会社(社長:赤井 紀男)と共同で、テラバイト級の記録容量を実現する新概念の多層光ディスクの基本技術を開発しました。これは、光ディスクの記録層に、電圧印加によって色が変化するエレクトロクロミック材料を採用し、記録したい層以外の層を透明化することによって、最大100層程度の多層化をしても記録再生を可能とする技術です。光ディスクの大容量化の需要が高まる中で、多層化による超大容量化実現への道を拓く基本技術です。

  近年、光ディスクはDVDやCDなど、音楽や動画、パソコンソフトの頒布、ハードディスクのバックアップ、デジタルビデオレコーディングなどの幅広い分野で普及しています。今後さらに、ビデオ記録の長時間化やディスクの小型化の要請に対応し、いっそうの記録密度の向上が望まれています。記録密度を向上させる基本技術として、記録光源の短波長化、光ヘッド用レンズの高解像度化が挙げられます。次世代光ディスクでは、記録光源に青紫レーザ(波長:400nm)を採用し、直径12cmで1層あたり約25GB、記録層の2層化で約50GBの光ディスクが可能となると言われています。さらなる記録密度向上の手段として、記録層の総数を増やす多層化技術が注目されています。
  多層化技術は、光の透過性を利用した光ディスク特有の技術で、光スポットの焦点位置を移動させ、任意の記録層だけに焦点を合わせることによって、選択的に記録・再生を行う技術です。しかし、層数を5層以上に増やすと、下の層では光が弱くなるという問題が生じるため、多層化には限界がありました。

  このような背景から、今回、日立と日立マクセルは共同で、現行光ディスク装置との互換性を保ちながら、記録層の多層化を実現する新概念の多層光ディスク技術を開発し、その効果を確認しました。開発技術は、印加する電圧によって色が変化するエレクトロクロミック材料を記録層に適用します。この記録層は着色させる電圧と、透明にする電圧が異なります。着色された層では光の吸収があるため、記録や再生が可能となります。つまり印加する電圧によって記録再生する層を「選択」することができます。選択した層以外の層を透明化することによって、5層以上の多層化が容易となります。また、従来の多層ディスクでは記録したい層以外の層からの影響を除去するために、層の間隔を十分広く取る(25マイクロメータ程度)必要がありました。これに対して開発技術は、選択した層以外が透明なので、層の間隔を約0.3マイクロメータまで狭くできます。したがって、従来方式の2層ディスクの層間隔と同程度の厚さで100層もの多層化が可能です。
  開発した多層光ディスク技術における情報の記録と再生は、次の原理で行われます。
(1) 記録:選択した記録層へ強い光を照射すると、発熱で照射部の透過率が変わり透明になります。これが記録マークとなり、この状態が電圧によらず固定されます。この記録マークは透明なため、電圧を切り替えて他の層に記録や再生を行うときに影響しません。
(2) 再生:記録された層を再生するには、選択した層に弱い光を照射すると、着色された記録層と透明の記録マークでは反射光量に差が生じます。これによって記録情報を読み出します

  今回、記録層一層からなる直径12cmの光ディスクを試作し、記録・再生の原理実験を行いました。実験では、ディスクの回転軸に取り付けたボールベアリングから約2Vの電圧を記録層へ印加しました。実験の結果、着色した記録層にレーザ光照射により記録マークを生成し、さらにこの記録マークからの信号読み出すことに成功しました。
  本装置の光学系は、CDやDVDとの互換性を維持できます。今後は、多層媒体を用いた動作確認を行い、本方式を用いた大容量多層光ディスクの実現を目指します。
  なお、本成果は、5月11日からバンクーバで開催されるOptical Data Storage Topical Meeting 2003で発表する予定です。

■用語説明
   (1) 多層光ディスク:ディスクの記録層を複数設け、各層に対して独立に情報の書き込み、読み出しを行い、大容量化を図るもの。2層のDVD-ROMも、実際に市販されている。
   (2) エレクトロクロミズム:電圧の印加により物質の色が変化する現象。

 
 
以上
 
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