日立製作所 計測器グループ(グループ長&CEO 猪俣 博)は、このたび、業界で初めて、
オートフォーカス機能を搭載した透過電子顕微鏡(以下、TEM(注1))「H−7600」を
製品化し、平成12年1月5日から販売を開始します。
本製品は、オートフォーカス機能に加え、GUI(Graphical User Interface)の採用に
よりパソコンによる操作性をさらに向上させたため、TEMの専門知識をもたない人でも快
適な操作が可能になりました。
TEMは、nm(ナノメートル)(注2)レベルの高倍率の観察が可能で、主に医学生物のバ
イオ分野や材料の研究開発で使用されていました。TEMの使用者としては、TEMの専門
知識を習得し、手動による微妙な焦点合わせなどに熟練した人々が中心でした。
しかしながら、近年では、食品、薬品などの製造業における品質管理をはじめ、今まで
TEMが使われることが少なかった分野でも、TEM並みの高い倍率の観察が必要になって
います。このような分野では、現状のTEMを使いこなすことは困難なため、初心者でも簡
単に使用でき、より操作性を向上したパソコン制御TEMが求められています。
本製品は、標準装備のTVカメラシステムと画像認識装置(以下、DSP(注3))を用い
て焦点の自動合わせを可能としています。
TVカメラシステムで画像を取り込み、瞬時にDSPにて画像の移動量と一致度の計算を
行い、この画像の移動量からフォーカスずれ量を換算します。そして、そのフォーカスずれ
量に対応して、対物レンズ電流を制御することによって、自動的に焦点のずれを補正します。
オートフォーカスのための条件設定は制御ウインドウから行ないますが、実際には操作パネ
ル上のスイッチでワンタッチ操作が可能となっています。
当社では、「H−7600」を食品、薬品などの分野向けに、平成12年に50台の販売
を目指しています。
(注1)TEM:Transmission Electron Microscope
(注2)nm:100万分の1mm
(注3)DSP:Digital Signal Processor
■オートフォーカスTEM「H−7600」の特徴
(1) 業界で初めてオートフォーカス機能を搭載
TVカメラシステムと画像認識装置を用いることにより、0.9秒で自動焦点調整します。
(2) 明るい部屋で試料の視野探し撮影が可能
本製品に内蔵したTVカメラシステムにより、PC画面上にリアルタイムでTEM画
像が表示できるため、明るい部屋での試料の視野探し撮影が可能となり、従来の暗室で
蛍光板上の像観察・操作から開放されます。
(3) 制御画面の表示はWindowsRの標準画面に準拠
制御画面の表示はWindowsRの標準画面に準拠しているので、TEMの初心者でも
TEM操作に入りやすい画面構成となっています。
(4)高効率な試料観察機能
操作画面上では常に観察位置をモニタしているので、例えばグリッド上での切片試料
の位置を簡単に把握でき、マイクロトレース機能を併用させることによってすでに観察
した視野か否かを瞬時に判断できます。
(5)ネットワーク対応
オプションでネットワーク対応機能を追加することにより、画像の送信や離れた場所
からリモート操作することが可能です。
■価格および出荷時期
製 品 名 価 格 出荷時期
オートフォーカス透過電子顕微鏡 5,200万円〜 平成12年2月29日〜
「H−7600」
■主な仕様
項 目 | 内 容 |
分解能 | 0.204nm(格子像)、0.36nm(粒子像) |
試料ステージ | 高精度ハイパーステージ |
加速電圧 | 40〜120KV |
倍 率 | Low Magモード ×50 〜 ×1,000 Zoomモード ×700 〜 ×600,000 |
TVカメラシステム | 観察視野径 30×40mm (フィルム画上換算) 画像表示 30フレーム/秒 (TVレート) |
オートフォーカス | 処理速度 0.9秒 適応倍率 ×100,000以下 |
■他社商標表記
Windows は,米国Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標で
す。
以 上
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