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平成11年12月16日

デジタルセルラ規格「GSM-900,DCS-1800/1900」のデュアルバンド用
高周波信号処理部の信号処理1チップICを製品化

−チップの高集積化により、システムの小型化、低コスト化を実現するとともに、
オフセットPLL方式等を採用し、「GSM-900,DCS-1800/1900」に容易に対応可能−

 日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 石橋 正)は、このたび、デジタルセルラ規格である
「GSM-900,DCS-1800/1900(注1)」のデュアルバンド用RF部(注2)の送受信信号処理を1チップで実
現する高集積IC「HD155131TF」を製品化し、平成12年1月からサンプル出荷を開始します。
 本製品は、デュアルPLL(注3)シンセサイザに加え、受信側に900MHzと1,800MHz帯の2系統のLNA
(注4)を内蔵し、さらに、ダブルスーパーヘテロダイン(注5)を採用してVCO(注6)のチューニング帯域
を最小限にできるため、周波数プランの設計が容易になります。また、送信側の周波数変換にオフセ
ットPLL方式を採用し、システムのアンテナ部のデュプレクサ(注7)を不要としたため、デュプレクサ
による電力損失がなくなります。
 本製品を使用することで、「GSM-900,DCS-1800/1900」対応のデジタルセルラシステムの設計が容
易になるとともに、システムの小型化、低コスト化、低消費電力化を実現できます。

 「GSM-900,DCS-1800/1900」は、欧州を中心に開発・構築されたデジタルセルラ規格で、現在では
アジア、中近東、アフリカなど世界各地で導入され、市場が拡大しています。
 さらに最近は、大都市におけるGSMのチャネル数不足に対応するため、「GSM-900,DCS-1800」の両
バンドを単一端末で使用できるサービスも開始されています。そのため、従来、各々の周波数帯に個
別対応していたシングル端末から、両バンドを一つの端末でサポートするデュアル端末のニーズが急
増しています。また、1999年にGSM端末のデータ伝送速度の高速化を図った新システムGPRS(General 
Packet Radio System)が規格化された上、米国では1,900MHz帯を使用したGSMシステムのサービスが
全州の都市部で開始されており、900/1,800/1,900MHz帯域に対応可能な高周波ICの開発が望まれてい
ました。
  一方で、携帯電話にはさらなる小型・軽量化、および長時間駆動が求められ、搭載される電子部品
に対しても実装面積を低減するための高集積化、低コスト化が要求されています。

  当社はこのようなニーズに対応するため、従来から英国のGSMのシステムコンサルタント会社「TTP 
Communications Ltd.」と共同で、GSM用高周波部信号処理用IC「HD155101BF」、「HD155121F」を開
発し、市場に投入してきました。そして、今回、デュアルPLLシンセサイザとLNAを1チップに集積し、
GPRSや「GSM-900,DCS-1800/1900」の周波数帯域に対応可能なRF部の送受信信号処理IC
「HD155131TF」を製品化しました。

 本製品は、0.35μm BiCMOSプロセスを採用し、SOI(Silicon On Insulator)と深溝分離構造によっ
て、RF部の大半の機能を1チップに集積しています。
 送信側は、オフセットPLL方式を採用することで帯域外雑音の低減を実現しており、従来アンテナ
部で必要とされていたSAWフィルタ(注8)やデュプレクサ等の部品を削減できます。また、受信側の
PGA(注9)回路のゲイン特性は、98dBのダイナミックレンジと良好なリニアリティを実現しており、
本製品とシリアルインタフェースで接続するベースバンド部(注10)から制御することが可能です。
 
  さらに、「GSM-900,DCS-1800/1900」用に設計した周波数プランは、同一のIF(注11)を使用するこ
とで、IFやRF発信器に必要なチューニング帯域を最小限にしています。動作電圧は2.7〜3.3Vと低電
圧で、消費電流は送信時が45mA、受信時が60mA、パワーセーブモード時が1μA以下という低消費電力
設計となっています。
 パッケージは、小型化実装可能なTQFP-56を採用しており、実装面積の低減により携帯電話機器本
体の小型・軽量化を実現します。

(注1) GSM:Global System for Mobile Communicationsの略。欧州の900MHz帯デジタルセルラ電話
     システム。
     DCS-1800/1900:Digital Cellular System,1800/1900MHz bandの略。GSMと同一方式を使用し
     た1,800/1,900MHz帯域のセルラ電話システム。DCS-1800はPCN(Personal Communications  
      Network)とも呼ばれている。
(注2)RF部:Radio Frequencyの略。高周波信号を処理する部分。
(注3)PLL:Phase Locked Loopの略。周波数の位相を同期させるループ回路を構成することにより、
     任意の周波数を発振させる回路技術、およびその回路。
(注4)LNA:Low Noise Amplifierの略。低雑音増幅器。
(注5)ダブルスーパーヘテロダイン:無線機の受信系で無線周波数の信号を2回周波数変換し、ベー
   スバンド周波数に変換する方式。
(注6)VCO:Voltage Controlled Oscillatorの略。入力制御電圧に従い、出力の周波数が変動する
     発振器。無線回路品質を左右する重要な部品のひとつ。
(注7)デュプレクサ:分波器。受信周波数用と送信周波数用の二つのフィルタを内蔵し、相互に分離
     する目的を果たす。スイッチ付き品もある。
(注8)SAWフィルタ:Surface Acoustic Waveフィルタの略。圧電体の表面を伝わる表面弾性波を利用
     したフィルタ。共振周波数とその近傍を通過帯域とするフィルタを実現する。   
(注9)PGA:Programmable Gain Control Amplifierの略。
(注10)ベースバンド部:音声信号のAD/DA変換、マンマシーンインタフェース、送受信信号のチャネ
     ル、タイミングなど、CODEC処理やシステム制御を行うデジタル信号処理部分。
(注11)IF:Intermediate Frequencyの略。中間周波数。

■応用製品例
・GSM-900、DCS-1800/1900 対応デジタルセルラシステム

■価 格
 製  品  名  サンプル価格(円)
 HD155131TF    1,000

■TTP Communications Ltd.について
 TTP Communications Ltd.は、英国ケンブリッジにおいて、ソフト/ハードを含めた商品開発に対
するコンサルタントをワールドワイドで行っている会社です。GSMシステムの開発では、ワールドワ
イドでコンサルタントを手がけ、数多くの実績があります。

■仕 様
項 目仕 様
動作電圧範囲2.7V〜3.3V
動作温度範囲-20〜+75℃
消費電流(3V時)GSM-900,
DCS-1800/1900モード
受信時60mA typ.
送信時45mA typ.
パワーセーブ時1μA max.
動作周波数GSM-900モード受信側925〜960MHz
送信側880〜915MHz
DCS-1800/1900モード受信側1805〜1990MHz
送信側1710〜1910MHz
PGAゲイン範囲-40〜58 dB typ.
送信側スプリアス抑圧比キャリア-40dBc typ. -31dBc min.
サイドバンド-40dBc typ. -35dBc min.
送信側帯域外雑音GSM-900モード925MHz-155dBc/Hz typ.
935MHz-165dBc/Hz typ.
DCS-1800/1900モード1805MHz-156dBc/Hz typ.
パッケージTQFP-56

                                                 以 上



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