日立製作所 半導体グループ(グループ長＆CEO 石橋 正)は、このたび、VTR制御用マイコンとして初
めて、TV画面上に文字などを重ねて表示するカラーのOSD(On Screen Display)表示機能を1チップに搭
載した16ビットマイコン「H8S/2199シリーズ」6品種を製品化し、平成12年3月からサンプル出荷を開始
します。

  近年、VTRシステムには、録画情報表示など使い勝手の向上を図るための多機能化に加え、部品点数の
削減等によるさらなる低価格化が求められています。これに伴い、VTRに使用されるデバイスにおいても、
高集積化、低価格化のニーズが高まっている上、高機能化に対応するために、従来の8ビットクラスのマ
イコンから16ビットマイコンへの移行が進んでいます。

　「H8S/2199シリーズ」は、当社の16ビットマイコン「H8S」 のCPUコアを使用し、VTR制御用マイコン
としては初めてカラーOSD表示機能を搭載した上、デジタルサーボ制御回路やタイマ、IICインタフェー
スなどの豊富な周辺機能を内蔵して高機能化、高性能化を図っています。従来主流であった8ビットマイ
コンでの制御は、録画情報表示などの高機能化はサブマイコン、OSD表示は外付けICで対応していました
が、本シリーズではこれらの機能を1チップで実現できます。また、今回の16ビット化により、デジタル
信号の処理性能が向上し、次世代のデジタルVTRにも対応できます。

　従来、テープを送るためのキャプスタンモータ制御と、テープに記録された動画データを読みとるヘッ
ドの正確な走行を行うドラムモータ制御は、ソフトウェアで対応していました。しかし、本製品ではこれ
ら2つのデジタルサーボ制御回路を内蔵し、ハードウェアでの制御を実現しました。これにより、デジタ
ルフィルタの演算やパラメータのソフトチューニングなどのソフトウェアデバッグに対する負担を大幅に
軽減でき、サーボ制御を容易に実現します。また、記録データの読み取りを安定化させるデジタルTBC制
御(注1)にも対応しています。

　さらに、業界で初めて8色のカラーOSD表示機能を搭載したことにより、録画予約画面などを多彩に表示
できます。また、キャラクタROMの内蔵により、表示文字数は、マスクROM版で384文字、F-ZTAT(TM)
(注2)版では512文字まで対応できる上、一画面上で32文字12行、24文字12行表示の切り替えが可能です。

  また、放送局から配信される情報コード(EDS(注3))を取り込むデータスライサー機能(注4)を内蔵した
ため、時間情報を取り出すことで時計設定等を容易に実現できます。その上、AFC(注5)機能を有した同期
分離回路を内蔵したことで、NTSC、PAL、SECAMの全世界の放送形式に対応でき、基板の共通化、設計・
製造のコスト低減を図ることが可能です。

　製品ラインアップとしては、VTR制御用マイコンとしては最大容量の256kバイトのフラッシュメモリを
内蔵したF-ZTAT(TM)版を2品種と、マスクROM版4品種を品揃えしました。すでに製品化している当社の信
号処理IC「HA118217F」と組み合わせて使用することにより、VTRシステムの主力部品をキットで提供で
きます。

  パッケージは、0.65mmピッチ幅の112ピンプラスチックパッケージを採用しています。

注1)TBC：Time Base Correctorの略。時間軸補正回路で画面の揺れなどをリアルタイムに補正する機能。
注2)F-ZTAT(TM)：F-ZTATは日立製作所の商標です。
注3)EDS：Extended Data Serviceの略。米国で行われているデータサービスで、テレビ用映像信号の垂
         直帰線期間に重ねられたキャプション信号をいう。
注4)データスライサー機能：映像信号中に埋め込まれたデータ情報を抽出する機能。
注5)AFC：Automatic Frequency Controlの略。自動周波数制御。

■応用機器
据え置き型VTR、TV一体型VTR

                                                                                 以 上