日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 石橋 正)は、このたび、ノートパソコンや交換機などのDC
/DCコンバータ電源用に、低オン抵抗(注1)、高速性、低ドライブ損失(注2)を実現したパワーMOS FET
「HAT2064R」を製品化し、平成11年7月26日からサンプル出荷を開始します。
本製品は、耐圧30Vで5.0mΩ(typ)の低オン抵抗を実現しており、当社従来品と比較してオン抵抗を約45%低
減しています。小型面実装パッケージ「SOP-8」品では
業界最小のオン抵抗であり、さらに高速性、低ドライブ損失も実現しているため、システムの省エネルギー
化を図ることが可能です。
省エネルギー法(注3)の改正に伴い、本年4月に導入されたトップランナー方式(注4)により、電子機器では
大幅な効率改善を図る必要性が増大してきました。一方、ノートパソコンや情報通信機器の交換機などでは、
高速化および大容量メモリの搭載により、消費電流が増加しています。このため、機器のDC/DCコンバータ
電源に対しても、1.2〜2.5V出力という低電圧化や待機時の低消費電力化が求められています。
従来、交換機や端末機等のDC/DCコンバータ電源では、ショットキバリアダイオードを使用し、2次側電源
の整流化を行っていましたが、近年の低電圧化により、低オン抵抗のパワーMOS FETを使用した2次側同期整
流方式の採用が増加しています。また、ノートパソコンのDC/DCコンバータ電源に使用されるパワーMOS FET
には、小型化、高周波化、省エネルギー化を図るため、さらなる低オン抵抗、高速性、低ドライブ損失が望
まれています。
今回製品化した「HAT2064R」は、耐圧30Vで4.5V駆動が可能な小型面実装パッケージ「SOP-8」を採用した
NチャネルのパワーMOS FETです。0.5μmプロセスの採用により、セル密度を従来の約2倍に高密度化し、セル
構造を最適設計することで、当社従来品と比較してオン抵抗を約45%低減しています。また、同一オン抵抗
の場合、スイッチングスピードとドライブ損失を、それぞれ約35%改善したため、定常オン損失、スイッチ
ング損失、待機時ドライブ損失のすべてを低損失化でき、電源の高効率化が可能です。例えば、電圧出力2V
等のDC/DCコンバータ電源では、90%以上の高効率化が可能なため、システムの省エネルギー化を実現でき
ます。
今後、Nチャネルタイプでは、30V耐圧「SOP-8」品として最小のオン抵抗となる3.4mΩ(typ)品や2.5V駆
動シリーズを製品化するとともに、耐圧20V以下および60Vクラスのラインアップ化も図っていきます。また、
Pチャネルタイプへの展開に加え、パッケージとしても「TSSOP-8」の薄型タイプやDPAK(当社外形コード)、
LDPAK(当社外形コード)などバリエーションを増やし、自動車電装機器等への幅広い用途に対応していく予
定です。
(注1) オン抵抗:パワーMOS FETが動作するときの動作抵抗。パワーMOS FETの性能を左右する最も重要なパ
ラメータで、オン抵抗は小さい方が高性能となる。
(注2) ドライブ損失:パワーMOS FETを高周波動作で駆動するときに必要な駆 動電力で、ドライブ損失
(Pd(W))として消費される。Pd=f・C・V2(f:動作周波数、C:入力容量、V:動作電圧)で表わされ、
動作周波数が高く なるほど、ドライブ損失は大きくなる。ドライブ損失は、動作電圧の2乗に比例
し、低電圧化に重要な要因とな る。
(注3) 省エネルギー法:正式名称は「エネルギーの使用の合理化に関する法律」。
(注4) トップランナー方式:自動車・電気機器等の指定された機器において、それぞれ現在商品化されてい
る中で、エネルギー消費効率が最高である機器の性能以上に省エネルギー基準を設定する方式。
■応用製品例
●ノートパソコン等のDC/DCコンバータ電源
●情報通信機器(交換機、端末)等の各種DC/DCコンバータ電源(同期整流スイッチング用)
●電子機器の各種パワーマネジメントスイッチ
●OA機器、HDD等の小型モータ機器
■ 価 格
製 品 名 サンプル価格(円)
HAT2064R 100
以 上
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