日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 石橋 正)は、このたび、SuperH(TM)(注1)RISCマイコン
「SH7055F」用に、欧州の自動車業界で標準となっているOSEK/VDX仕様に準拠したリアルタイムOSを製品化
し、平成11年11月から販売を開始します。本製品を使用することで、エンジンの燃料噴射やサスペンション
等の自動車制御関連アプリケーションソフトの開発、メンテナンスなどを容易に行うことが可能です。
現在、各種組込み用マイコン向けに、半導体メーカーやサードベンダーがリアルタイムOSを提供しており、
当社もμITRON(注2)仕様準拠のリアルタイムOSを製品化しています。
自動車業界では、エンジンやサスペンション等を制御するプログラムに対して、性能要求やプログラムサ
イズへの制約が厳しく、これまではリアルタイムOSではなく、アプリケーション毎に専用プログラムを作成
してきました。しかし、近年は制御内容の多様化、高度化によりプログラムサイズが増大し、さらにソフト
ウェアの再利用が困難であることから、専用プログラムでは対応しきれなくなってきました。また、制御用
プログラムに対する高機能・高性能化の追求に加え、製品開発の分業化に対応し、異なるメーカーが提供す
るECU(注3)を容易に接続するとともに、アプリケーションソフトを部品化して再利用するために、自動車分
野の要求仕様に特化したリアルタイムOSへのニーズが高まっています。
そこで、欧州では、このようなニーズに対応するため、主要自動車メーカーが中心となり、1997年に標準
OS規格として「OSEK/VDX」(以下OSEK)を策定しました。
本製品は、大容量フラッシュメモリを搭載し、エンジン制御などに最適な「SH7055F」上で動作するリア
ルタイムOSで、自動車制御関連のアプリケーションソフトの開発やメンテナンスを容易に行うことが可能で
す。また、OSEKの通信仕様に準拠した通信プログラムだけでなく「SH7055F」の内蔵HCAN(注4)用ドライバも
提供しており、容易にECU間の通信が行えます。
ユーザーがシステム開発を行う際、本製品で提供している割り込みやアラームなどの機能から必要なもの
を選択、設定することで、各々のプラットフォーム用に最適化できます。当社は開発環境として、OSEK用の
プログラム記述言語OIL(注5)に準拠し、グラフィカルユーザーインタフェースを採用して簡単に操作できる
コンフィグレータを提供します。これにより、ユーザーのシステムに最適化したリアルタイムOSを容易に構
築できます。
さらに、当社のインサーキットエミュレータ「E8000」のユーザーインタフェースHDI(Hitachi Debugging
Interface)上で動作し、さらにタスク状態等をモニタできるデバッガを提供することで、マルチタスクプロ
グラムにおけるデバッグ作業を容易にしています。
本リアルタイムOSを採用し、これらの関連ツールを有機的に結合させた統合開発環境を使用することによ
り、アプリケーションプログラムの開発やメンテナンス作業の効率を2〜3倍向上させることが可能です。
今後は、本製品を他のSuperH(TM)ファミリや、HCAN内蔵マイコン「H8S/2623シリーズ」などのH8Sシリー
ズに展開していく予定です。
(注1) SuperH(TM)は(株)日立製作所の商標です。
(注2) μITRONはMicro Industrial TRONの略で、μITRON仕様とは社団法人トロン協会が策定し、
一般公開しているリアルタイムOSの仕様。
TRONはThe Realtime Operating system Nucleusの略。
(注3) ECUはElectric Control Unit(電子制御装置)の略で、エンジンやサスペンション、エアバッ
グ、パワーステアリング、ABS等の電子制御を行う。
(注4) HCANはHitachi Controller Area Networkの略で、車載用のコントローラエリアネットワー
クの仕様であるCANに、日立が使い勝手向上を加え提供する。
(注5) OILはOSEK Implementation Languageの略で、OSEK用プログラム記述言語としてOSEKで規定さ
れている仕様のひとつ。
■応用機器
・自動車:エンジン制御、AT制御、サスペンション制御
・産業: FA制御用機器、 NC装置、シーケンサ
■価 格
契約形態 契約内容 型 名 価 格(円)
C4(オブジェクト契約) 評価用 HS0700V0IN1SRB 500,000
C1(オブジェクト契約) 事業用 HS0700V0IN1SRB 4,500,000
B1(ソース契約) 事業用 HS0700V0IN1SRS 6,500,000
各契約形態の詳細については、照会先までお問い合わせ下さい。
以 上
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