日立製作所は、このたび、フラッシュカード事業強化の一環として、携帯電話やポータブル音楽プレーヤ
などの携帯型マルチメディア機器に最適な超小型・軽量のフラッシュカードであるフラッシュMultiMediaCa
rd(TM)(注1)(以下、マルチメディアカード)市場に参入します。
今回、第一弾として、業界最高速の読み出し速度17Mビット/秒、書き込み速度7.7Mビット/秒を実現した16
Mバイト・フラッシュマルチメディアカード「HB288016MM」を製品化し、平成11年5月からサンプル出荷を開
始します。
マルチメディアカードは、メモリとコントローラで構成されますが、当社では省スペースで大容量化を実
現するため、業界で初めて大容量フラッシュメモリとコントローラを1チップ化しています。
本製品では、多値技術(注2)を採用した128MビットAND型フラッシュメモリ(注3)とRISCマイコン
「SuperH(TM)」(注4)のCPUをコアとしたセルベースICのコントローラを1チップに集積しています。
本製品の仕様は、シーメンスグループのInfineon Technologies AG(以下、インフィニオン社)と共同で策定
しており、互いにセカンドソースとなることで、安定供給を実現します。
現在、フラッシュカードとしては、デジタルカメラの写真データ記録やハンドヘルドPCの外部記憶用の
CompactFlash(TM)(注5)(以下、CF)、産業機器のプログラム記録用のPC-ATA(注6)カードなどが実用化され
ています。しかし、さらなる小型・軽量化が進む携帯電話などの携帯情報機器や、ポータブル音楽プレー
ヤーなどの携帯エンターテイメント機器においては、大きさ、重さ、使い勝手などの点でこれらのカードの
採用は困難でした。
そこで、マルチメディアのデータ格納用として、超小型・軽量化を実現したメモリカードがマルチメディ
アカードです。
マルチメディアカードは、標準化団体である「MultiMediaCard Association」によって標準化作業が行わ
れています。1999年4月12日時点のメンバー数は43社で、携帯電話、音楽プレーヤなどの機器メーカー、カ
ード・メーカー、ソケット・アダプタなどの周辺部品メーカーで構成されており、当社はインフィニオン社
などとともに、そのボードメンバーとして、仕様の策定、普及活動を行っています。
マルチメディアカードの仕様は、現在「System Spec Version 2.0」がメンバーに公開されており、おもな
特長は、1)小型の切手サイズ(32mm×24mm)で厚さが1.4mm、 2)7ピンでシステム本体と接続、 3)1ピン
でデータをやりとりするシリアルインタフェース、 4)最大30枚まで同時に接続可能、 5)シリアルナンバ
内蔵によるセキュリティの向上です。
携帯電話における小型・軽量化の進歩は著しく、従来のフラッシュカード、例えばCFでも容積約5cc、重量
約10グラムのため、携帯電話に実装することは困難でした。しかし、マルチメディアカードは、容積がCFの
約1/5の1cc、重量が約1/6の1.5グラムと、小型・軽量化を実現しており、携帯電話への実装が可能です。
一方、音楽プレーヤーなどのパーソナル機器では、取り扱い易さが普及の大きなポイントのため、マルチ
メディアカードは7ピンでシステム本体と接続する構造となっています。また、切り欠けによる逆差し防止機
構がついているため、専門知識のない個人ユーザも容易に使用できます。
さらに、1ピンのみを使うシリアルインタフェースで、新たに開発されたマルチメディアカード方式と従来
から使用されているSPI方式がサポートされています。これにより、機器のシステム設計に適した方式を選択
できます。
従来のフラッシュカードは、同時に複数枚のカードを接続できませんが、マルチメディアカードは、最大30
枚まで同時に接続して使用可能です。このため、メモリ容量を自由に増設できる上、異なった種類のカード
(ROMカードとフラッシュカード)を同時に接続することも可能です。
今回の製品は、「System Spec Version 2.0」に適合するとともに、16Mバイトの大容量と、フラッシュマル
チメディアカードでは業界最高速の読み出し速度17Mビット/秒、書き込み速度7.7Mビット/秒を実現していま
す。また、2.7〜3.6Vの低電圧動作が可能です。
フラッシュメモリには、0.25μmプロセスと多値技術を採用した128MビットAND型フラッシュメモリを、コント
ローラにはRISCマイコン「SuperH(TM)」のCPUをコアとしたセルベースICを使用しています。
当社の先端技術による2つの機能を業界で初めて1チップに集積することで、32mm×24mmという小型の切手サ
イズで大容量かつ高速書き込みを実現しました。
なお、フラッシュマルチメディアカードを使ったシステムを設計する際のサポートツールとして、カード
を駆動するドライバソフト、作成したファイルを管理するファイルマネージャ等のソフトウェア、およびカ
ードとホストのやり取りをモニタするプロトコルアナライザ等のハードウェアサポートが有効です。当社で
は、サードパーティと協力し、これらのサポートツールを準備していきます。
また、システム設計を容易にするための手段として、マルチメディアカードのインタフェースを組込んだ
「SuperH(TM)」マイコンの開発を行っていきます。
フラッシュマルチメディアカードの今後のロードマップとしては、1枚のカードに16Mバイト・フラッシ
ュメモリを2枚積層した32Mバイト・マルチメディアカードを1999年第3四半期に、さらに64Mバイト品を2000
年、128Mバイト品を2001年に順次製品化していきます。
(注1)MultiMediaCard(TM):MultiMediaCard(TM)は、独InfineonTechnologies AGの商標です。
(注2)多値技術:チップサイズの縮少に有効な今後の大容量フラッシュメモリに適した技術で、通常の
メモリでは'0'/'1'の2つのしきい値レベルであるのに対し、'00'/'01'/'10'/'11'の4つのしき
い値レベルを持たせることで、1セルで2セル分の働きを実現する。
(注3)AND型フラッシュメモリ:AND型フラッシュメモリは、日立独自のメモリセルを採用し、大容量
・高速・低コストを実現するコストパフォーマンス追求型のフラッシュメモリです。
日立は、平成8年に業界初の64Mビットフラッシュメモリとして製品化、デジタルカメラ向けの
CompactFlash(TM)(以下、CF)、産業機向けのPC-ATAカードに搭載し、 業界をリードしてき
ました。さらに、平成10年8月には同メモリセルを採用した業界初の256Mビットフラッシュメモ
リを発表し、192MバイトCF、640MバイトPC-ATAカードも同時に開発しています。
(注4)SuperH(TM):SuperH(TM)は、(株)日立製作所の商標です。
(注5)CompactFlash(TM):CompactFlash(TM)は、米国サンディスク社の商標であり、CFA(Compact
Flash(TM) Association)にライセンスされています。日立製作所はCFAのメンバーです。
(注6)PC-ATA:正確にはPCカードATA仕様。PCMCIA(Personal Computer Memory Card International
Association)で決めたカード仕様のうちのATA(Advanced Technology Attachment)仕様。
*MultiMediaCard AssociationのURL:http://www.mmca.org
■応用機器
・スマートフォン、ページャ等の携帯通信機器
・ポータブル音楽プレーヤ、玩具、ゲーム機などの携帯エンターテイメント機器
・デジタルカメラ、カムコーダなどの携帯画像機器
・パームサイズPC、電子手帳等の携帯情報機器
■価 格
製 品 名 容 量 価 格
HB288016MM 16Mバイト オープン価格
■仕 様
項 目 仕 様
メモリ容量 16Mバイト
システム・パフォーマンス 読み出し:17M ビット/秒
書き込み:7.7Mビット/秒
電源仕様 動作電圧:2.7 - 3.6V
読み出し電流:33 mA
書き込み電流:35 mA
読み出し仕様 512バイト ブロックリード
多ブロックリードも可能
動作温度範囲 -20〜+85度
外形寸法 32mm×24mm×1.4mm
以 上
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