日立はいま大きな変化を求められる経営環境にあり、こういう時に社長として働けることに大きな責
任を感じ、期待を持っています。新しいスタートにあたって、日立は何を使命として進んでいくのかと
いう理念と、どのような事業を展開していくのかという事業方針と、これを実現するための変革の進め
かたの3点について皆さんにお話します。
まず私は、日立の使命を、ビジネスを通して、新しい時代に人々が切実に求めているものに的確に応え
ていく、「便利で安心できる社会システムを提供していく企業」になることだと考えています。社会と
そこに生活する人々の心を満たし、安心し、便利だと実感していただくサービスを提供することによっ
て、「日立は信頼できる会社だ」と評価していただきたいのです。
第二は、具体的にどういう事業を展開して行くのかという点です。私は、世の中を24時間支え続ける、
なくてはならぬ「社会の基幹システム」を我々こそがやっているのだ、と自負しています。ただ、この
大きな変化の時代にあって、各々の事業の内容は質的に変わっていく必要があり、そのために必要なの
が情報装備です。お客様ニーズを先取りするサービスの提案を、情報技術を駆使して徹底して進めるこ
とによって、日立は、必ず高収益企業として躍進して行くことができます。もう一つの事業展開の柱は、
ITS等に代表される、全く新しい市場としての新情報サービスです。日立は、今後、サービス事業を
新しい事業の柱として、現在の連結ベースで1.5兆円の売上を、2003年には2.5兆円に拡大し
ていき、先端情報サービス企業として一層の高収益を目指していきます。
第三は、この新しい日立を実現するために、どのように変革していくかです。
新しい経営体制は、意思決定のスピードアップが大きなねらいであり、なにより役員、幹部の率先し
た意識改革や行動変革が改革の成否を決めるといえます。私も陣頭指揮をとり、改革を目に見える成果
につなげていくように進めていく決意です。また経営改革と併行して連結経営の観点やグローバルの視
点での事業の見直しや、M&Aやアライアンスといった、思い切った経営施策を実行していく必要があ
ります。この速やかな決断と実行も私に課せられた大きな責任です。
また私は、日立の全ての活動は外からの視点、特にお客様の視点で行われるべきだと考えています。
したがって、事業や経営施策についての決断は、お客様に評価されるかどうかが第一です。私が申し上
げている「信頼とスピード」の大きなポイントは、お客様の信頼を第一に、スピードアップしてビジネ
スを進めて行くということです。私は社内での「根回し」や社内調整を求めません。私は皆さんを信頼
し、皆さんに任せます。皆さんもスピードを持って私の信頼に応えてください。これからの日立に必
要なのは、批評、分析よりも創造性を重んじ、高い志や夢、目標の実現に向けて積極性と行動力を発揮
する社員です。そのためには、上下の区別なく、対等な立場で議論していく習慣を作っていかなくては
なりません。
私の目指すところは、「世界で最も信頼できる会社、といえば誰もがまず選ぶ会社」です。これはお
客様に選ばれる会社であり、株主の方が投資する価値のある会社です。信頼される高収益の企業として、
21世紀の世界の電機産業をリードする強い日立は必ず実現できると確信しています。私自ら、変わって
いく日立の先頭に立ち「信頼とスピード」をモットーに努力してまいります。皆さんも一緒に改革を進め
ていきましょう。
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