日立製作所は、この度、ICカード用OS(オペレーティングシステム)である
「MULTOS」(Multi-application Operating System) の最新版を搭載したマイク
ロコントローラチップ(H8/3114)の販売活動を開始しました。
この新しいチップは、既に1998年第4四半期から販売を開始している
「MULTOS version 3.0」(H8/3112)のシリーズとして展開するものです。
主要ユーザ向けサンプル(テストチップ)は、本年第2四半期に提供し、量産
は本年第3四半期に開始する予定です。
今後急速に成長が期待されるICカード分野でのデファクトスタンダード化を
目指し、この事業を積極的に推進します。
クレジットカードや銀行のキャッシュカード、小売店のカードなど、日常生活
で利用されるカードは、磁気ストライプに情報を保持する磁気カード型が主流
となっていましたが、より高い安全性や多目的化のニーズの高まりに伴い、
近年では、半導体を利用したICカードへの移行が急速に進んでいます。
「MULTOS」は、一枚のICカードに複数のアプリケーション・プログラムを搭
載し、カードを発行する企業や機関がユーザー固有のカードを作ることを可
能にするセキュリティの高いICカード用OSです。ICカード化が進展した社会
におけるICカード用標準OSの有力候補と見られており、世界各国の金融、
流通業のみならず、交通、通信、大学、医療機関、政府機関等での採用が
積極的に検討されています。
当社と大日本印刷株式会社(以下、DNP)の両社は、ICカード業界の標準
OSとして「MULTOS」採用を促進するとともに、その開発の管理を目的とした
コンソーシアム「MAOSCO」の創立メンバーとして参画しています。このコンソ
ーシアムは、英国モンデックスインターナショナル社(以下、MXI)の提唱により
97年5月に設立され、現在活発な活動を行っています。
当社とDNP及びMXIの三社はそれぞれの持つ技術・ノウハウを結集し、昨
年9月に共同開発の成果として、世界に先駆けて「MULTOS version 3.0」を
搭載したマイクロコントローラチップ(H8/3112)を製品化しました。
その後、三社は、H8/3112チップにより、ICカード市場での優位性を保持し
つつ、次期製品での事業協力をさらに強力に推進する目的で開発を進めて
きました。
今回の製品は、三社共同開発の最新版である「MULTOS version 4.0」を搭
載したチップで、線幅0.5ミクロンの微細加工技術を用いて製造され、暗号処
理コプロセッサを内蔵し、16キロバイトのEEPROMと32キロバイトのROMを有
しています。現在販売中のH8/3112チップに比べ、高機密性・大容量化、高
速処理化等の特徴を備えており、カード上の複数のアプリケーション間の安
全な通信を可能にするものです。
また、最新暗号技術を使用しており、これまで当社が電子マネー「MONDEX」
用チップの設計・製造で得たノウハウとDNP、MXIの持つ優れた技術が活か
されています。なお、「MULTOS version 3.0」向けに開発したアプリケーション
プログラムは上位互換性を保つため、「MULTOS version 4.0」においても動
作が保証されています。さらに、このチップはEMV3.1.1仕様を満たすように
設計されています。
同時に当社では、「MULTOS」アプリケーションプログラム開発のための「開
発ツール」を準備しており、本年2月から提供する予定です。この開発ツール
はマイクロソフト社のWindows(R)上で動作し、アプリケーションプログラムの開
発に必要な機能や「MULTOS」ICカード上に開発したプログラムを格納する機
能などを持っています。
既に日本を含むアジア、北米、欧州等の顧客から多数の引き合いを受けて
おり、今後積極的に受注活動を展開します。
(ご参考)
現在、「MAOSCO」には、アメリカンエキスプレス、大日本印刷、ディスカバー
ファイナンシャルサービセズ、ユーロペイインターナショナル、富士通、ギーセ
ックアンドデブリアント、日立製作所、キーコープ、マスターカードインターナシ
ョナル、モンデックスインターナショナル、モトローラ、シーメンス等が加入して
います。
<他社商標表記>
・Windowsは、米国Microsoft Corporationの米国及びその他の国における登
録商標です。
・その他記載の会社名、商品名は、それぞれの会社の登録商標または商標
です。
以 上
|