日立製作所は、このたび、フラッシュメモリ内蔵マイコン「F−ZTAT(TM)シリーズ(注1)」として、携帯
健康機器やページャなどLCD表示付の電池駆動型携帯機器向けに、低消費電力のフラッシュメモリ
と、ドットマトリクス表示のLCDコントローラを内蔵した8ビットシングルチップマイコン「H8/3857F」を製
品化し、平成11年2月からサンプル出荷を開始します。
　本製品は、32kHzクロック動作時で消費電流を当社従来品の1/20以下に低減するとともに、最大
1,280ドットの表示を実現しており、多彩な表示が可能です。

　当社では、家電、民生、産業分野向けに低消費電力を追求した8ビットマイコン「H8/300Lシリーズ」
のラインアップを強化しており、セグメント表示LCDコントローラ内蔵シリーズとしては「H8/3834シリー
ズ」「H8/3867シリーズ」などを製品化し、ページャや電力メータ等に採用されています。
　また、近年の健康指向により、万歩計に代表される携帯健康機器でも心拍の計数や体脂肪の測定
を行える機器が発売されており、これらに搭載されるLCDパネルに対しても、文字表示だけではなく簡
単なグラフィックも表示可能な表示分解能が求められています。
　さらに、LCD表示付の携帯機器は少品種、大量生産品が大半ですが、今後は同じハードウェアでも
表示パターンの差別化や、多様な仕向先変更への迅速な対応が必要であり、そのために、オンボー
ドでのプログラム書き換えが可能なフラッシュメモリの内蔵が求められています。

　そこで今回、フレキシブルなプログラム変更や小型化、軽量化に対応するための低消費電力フラッシ
ュメモリと、グラフィック表示のニーズに対応するためのドットマトリクス表示LCDコントローラを内蔵した
「H8/3857F」を製品化しました。
　本製品は、60kバイトのフラッシュメモリと2kバイトのRAMを内蔵しており、フラッシュメモリ部はワード線
駆動方式の改善(注２)などにより、すでに量産中の当社フラッシュメモリ内蔵8ビットマイコンと比較し、消
費電流を1/100以下に低減しています。このため、サブアクティブモードである32kHzクロック動作時は、
LCDを表示した場合でも当社従来品比1/20以下の100μA以下で命令実行が行え、電池駆動型携帯機
器への応用が可能です。
また、「H8シリーズ」では初めてドットマトリクス表示に対応したLCDコントローラを内蔵しています。 
  LCDコントローラは、最大1,280ドットの表示が可能で、最大駆動電圧は7.0Vです。駆動するLCDパネル
により駆動電圧やパネルの負荷は異なりますが、本製品は多種多様なLCDパネルに対応できるように、
2倍/3倍昇圧回路や電源ブリーダ抵抗、およびボルテージフォロアオペアンプを内蔵しています。さらに、
LCDパネルの微妙なコントラストをソフトウェアでプログラマブルに微調整できる輝度調整回路を内蔵し
ているため、LCDパネルの選択自由度が増し、高品質な表示が可能となります。

　他の周辺機能としては、4種類のタイマとフラッシュメモリ制御用ウォッチドッグタイマ、14ビットPWM、シ
リアルコミュニケーションインタフェース、8ビット分解能A/D変換器などを内蔵しています。

　出荷形態は、チップのほか144ピン1.7mm厚QFPタイプのFP-144H、および薄型1.2mm厚TQFPタイプの
TFP-144の2種類を揃えています。

  なお、本製品は、すでに量産中のセグメント表示LCDコントローラ「H8/3834シリーズ」の機能仕様をベ
ースに、ドットマトリクス表示LCDコントローラを搭載した製品です。ドットマトリクス表示LCDコントローラの
モジュールインタフェースは、I/Oポート方式を採用しています。そのため、「H8/3834シリーズ」の表示機
能強化や、マイコンとLCDドライバで構成されていたシステムを本製品１個で置き換える場合でも容易に
プログラム開発を行うことが可能です。

　今後は「H8/3857シリーズ」として、以下のマスクROM版も順次製品化していく予定です。
　　・「H8/3857」60kバイトROM/2kバイトRAM
　　・「H8/3856」48kバイトROM/2kバイトRAM
　　・「H8/3855」40kバイトROM/2kバイトRAM

(注1)F−ZTAT(TM)(Flexible-Zero Turn Around Time)は、ターンアラウンドタイムをゼロにすることで、マ
      イコン開発の期間短縮を実現します。フラッシュメモリを内蔵し、オンボードでプログラムの書き換え
      ができるため、応用機器の生産後のプログラム書き込みや、製品出荷後のプログラム変更が可能
      です。F−ZTAT(TM)は(株)日立製作所の商標です。
(注2)従来のフラッシュメモリは、ワード線駆動用ドライバに直流電流を流していたため、消費電流には動
       作周波数にかかわらず一定の電流が消費されていました。今回、フラッシュメモリ部のワード線駆動
       方式を改善し、直流電流をカットすることで、フラッシュメモリで消費される電流をセンスアンプでの消
       費電流のみに抑え、マスクROM品と同等の消費電流で動作できます。例えば、サブアクティブモード
       (32kHzクロックモード)での消費電流は、LCDを表示した場合でも100μA以下となり、当社従来比1/20
       以下の消費電流を実現しています。

＜応用製品例＞
・携帯健康機器  ・ページャ    ・リモコン    ・携帯型カードリーダ
・携帯型玩具     ・プリンタ     ・FAX         ・調理家電品

                                                                                        以 上