(株)日立製作所 基礎研究所の外村彰(とのむら あきら)主管研究長は、この度The Franklin
Institute(米国Philadelphia市)より1999年度The Benjamin Franklin Medal of The Franklin Institute in
Physicsを受賞することになりました。
受賞理由は、「高輝度電界放出型電子線を用いたホログラフィー電子顕微鏡の開発(注1)、ならびに
同顕微鏡を用いたアハラノフ−ボーム効果の検証(注2)と超伝導体中の磁束量子の動的観察(注3)」
です。授賞式は1999年4月29日(木)に The Franklin Instituteで行われます。また同時に受賞記念国際
シンポジウムが開催されます。
The Franklin Instituteから授与される賞には、Bower Award(科学、経営の2部門)、Benjamin Franklin
Medal (物理、化学、生命科学、工学、計算機・認知科学の5部門)の計7種類があり、今回外村は物理
の Benjamin Franklin Medalを受賞します。過去174年間の受賞者の中には、Thomas Edison, Wright兄弟
などの発明家、Marie Curie, J. J. Thomson, Albert Einstein, Wolfgang Pauliなどの著名な物理学者もいて、
世界の物理学賞のなかでも非常に権威の高いものとされています。日本人では、江崎玲於奈氏(1961)、
有馬朗人氏(1990)のお二人が受賞しています。 またノーベル物理学賞受賞者の15%が受賞前にこの
Medalを受賞しています。
The Franklin Instituteは1824年、米国Philadelphia市にBenjamin Franklinを記念し、科学・技術の啓蒙・
普及を目的として創設された非営利団体で、とくにここで運営されている科学博物館は有名です。
(注1)高輝度電界放出型電子線を用いたホログラフィー電子顕微鏡の開発
量子力学によると、電子は粒子の性質だけでなく、波の性質も持っているため、試料を透過する
と元の電子と干渉して干渉縞を発生します。これにより試料内部の電場・磁場の振舞いが観測
できます。高輝度電界放出型電子線により、数千本もの干渉縞が初めて観測できるようになりホ
ログラフィー電子顕微鏡が実用化できました。
(注2)アハラノフ−ボーム効果の検証
電磁気学では、ベクトルポテンシャルという量が、電場・磁場を計算する過程で便宜的に使われて
いました。アハラノフとボームは、1959年、「ベクトルポテンシャルは単に便宜的で数学的な量では
なく、より本質的な量であり、物理的に実在する」との理論を発表しました。その後アハラノフ−ボー
ム効果の実験的検証がさまざま試みられましたが、いずれも十分ではなく、長期に渡る論争になり
ました。外村らは、1986年、ホログラフィー電子顕微鏡を用い、また試料を微細加工し、超伝導状
態に置くなどして、きわめて精緻な実験をして、疑問の余地なく同効果の検証をし、論争に終止符を
打ちました。これはさらに、素粒子理論で重要な、ゲージ場の理論の、実験的な根拠を与えること
にもなりました。
(注3)超伝導体中の磁束量子の動的観察
超伝導体中の磁束量子は、超伝導体の実用化のために重要な役割を果たしますが、その動的振
る舞いはこれまで観察できませんでした。ホログラフィー電子顕微鏡を用いた、「ローレンツ顕微鏡
法」という方法で、磁束量子が動き回る様子を初めてビデオに撮影できました。
以 上
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