日立製作所は、このたび、 PDCやGSMなどの携帯電話の基準発振に用いられる電圧制御型水晶
発振器(VCXO)(注1)用として、業界トップレベルの高容量変化比(注2)と低直列抵抗を実現した低電圧
駆動型バリキャップダイオード「HVC376B」を製品化し、平成10年9月からサンプル出荷を開始します。
本製品はスーパーシャロー(Super shallow)PN接合プロセス(注3)の採用等により、当社従来品と比較
し、逆電圧1Vと4V時の容量の差(容量変化比)を4.8と約30%高め、直列抵抗も0.8Ωと約50%低減して
います。このため、VCXOユニットの低電圧駆動化および低ノイズ化が可能となります。
携帯電話の低電圧化、低消費電力化に伴い、VCXO用バリキャップダイオードに対しても、電圧変化
範囲の狭い領域で発振周波数を大きく変化させる高容量変化比と、発振回路のノイズをより低減する
ための低損失化が求められています。しかし、容量変化比を大きくすると、直列抵抗が増加するという
課題がありました。
今回製品化した「HVC376B」は、当社のスーパーシャロー(Super shallow)PN接合プロセスの採用によ
り、容量変化比と直列抵抗の両方を大幅に改善しました。当社従来品の「HVC359」と比較すると、容量
変化比が約30%アップし(実力値:C1/C4=4.8)、直列抵抗も1.5Ωから0.8Ωへと約50%低減しています。
このため、VCXOユニットの低電圧駆動化、低ノイズ化、および発振停止電圧のより低い設定が可能と
なります。
また、容量の温度ドリフトも低電圧領域で60ppm/℃と小さく、安定したオペレーションが可能です。こ
れらにより、発振ユニットの性能と設計マージンが向上でき、PDC、GSMなどの携帯電話自体の性能改
善に貢献することが可能です。
さらに、プロセスの改良を行ったため、ウェハ内の容量のバラツキが改善され、容量偏差は当社比で
30%狭くすることが可能となり、設計段階および量産移行時のスムーズな立ち上げや、量産開始後の
安定した生産を実現します。
なお、本製品は、VCXO以外にも低電圧でのオペレーションを必要とする電圧制御型発振器(VCO)や
可変バンドパスフィルタなどにも適用可能です。
今後は、C1容量値が50pF前後の低周波用や、GHz帯でのC1が5pF前後の低容量品を開発し、ライン
アップを強化していく予定です。
注1)電圧制御型水晶発振器(VCXO(Voltage Controlled Crystal Oscillator)):周波数の調整を電圧の変
化によって行うユニット。
注2)容量変化比:異なる2つの逆電圧時の端子間容量比。バリキャップダイオードでは重要な特性の1つ。
注3)スーパーシャロー(Super shallow)PN接合プロセス:当社が開発したダイオードのPN接合のプロセス。
接合形成時の低温化と不純物濃度の適正化により、接合の深さをサブミクロン化した。
<応用例>
1) VCXOユニット
2) VCOユニット
3)可変バンドパスフィルタ
<価 格>
製 品 名 サンプル価格
HVC376B 12円
以 上
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