日立製作所は、このたび、VTRチューナ用としては業界で初めて10Vの低電圧駆動を実現したバリ
キャップダイオード「HVC321B」を製品化し、平成10年9月からサンプル出荷を開始します。本製品は、
駆動電圧を従来の25Vから10Vに低減したことで、VTRセットの電源電圧(約12V)をそのまま使用でき
るため、従来昇圧用として必要であったDC-DCコンバータが不要となります。さらに、低電圧にもかか
わらず、従来同様の高容量変化比(C1/C10>10.5)(注1)などを実現しており、チューナセットの低コス
ト化、省エネルギー化を図ることが可能です。
TVやVTRチューナ等の電子同調回路用のバリキャップダイオードは、通常25V駆動が一般的である
ため、VTRのチューナ用に使用する場合は、VTRの最大電源(約12V)から25VにDC-DCコンバータで
昇圧する必要がありました。しかし、最近は、EMC(注2)指令等により低電圧化が求められており、チュ
ーナセットの低コスト化、省エネルギー化のニーズが高まっています。
当社は、このようなニーズに対応し、従来品と同等の性能を持ちつつ、低電圧を実現したバリキャッ
プダイオード「HVC321B」を製品化しました。
本製品は、当社のスーパーシャロー(Super Shallow)PN接合プロセス技術(注3)を採用することで、エ
ピタキシャルウェーハ仕様およびプロセス条件の最適化により、VTRチューナ用バリキャップダイオード
としては業界初の10V低電圧駆動を実現しています。さらに、従来同様の高容量変化比(C1/C10>10.5)
を実現するとともに、容量偏差を当社従来品「HVC306A」と比較して約30%低減しています。また、高周
波直列抵抗も1Ω以下(VR=5V、f=470MHz時)と低損失を実現しています。
パッケージは、EIAJ外形コード「SC-79」に準拠した小型・薄型の1608パッケージ「UFP」(当社外形コ
ード名)を使用しており、高密度実装が可能です。
今後は、引き続き低電圧駆動型バリキャップダイオードの製品展開を行い、ラインアップを強化してい
きます。
注1)高容量変化比(C1/C10>10.5):逆電圧1Vと10V時の端子間容量の比。チューナ用のバリキャップ
ダイオードでは重要な特性の1つ。
注2)EMC(Electromagnetic compatibility):電磁環境適合性。
注3)スーパーシャロー(Super Shallow)PN接合プロセス技術:当社が開発したダイオードのPN接合のプ
ロセス技術。接合形成時の低温化と不純物濃度の適正化により、接合の深さをサブミクロン化した。
<応用例>
1)VTR/VCRの電子同調回路
2)電圧可変発振器(VCO)/電圧可変水晶発振器(VCXO)の発振同調回路
3)FMチューナの電子同調回路
<価 格>
製 品 名 サンプル価格
HVC321B 8円
<仕 様>
1.絶対最大定格(Ta=25℃)
項 目 | 記 号 | 定格値 | 単 位 |
逆電圧 | VR | 15 | V |
接合部温 | Tj | 125 | ℃ |
保存温度 | Tstg | -55〜+125 | ℃ |
2.電気的特性(Ta=25℃)
項 目 | 記 号 | Min | Max | 単 位 | 測定条件
| 逆電流 | IR1 | − | 10 | nA | VR=15V
| | IR2 | − | 100 | VR=15V,Ta=60℃
| 端子間容量 | C1 | 29.0 | 33.0 | pF | VR=1V,f=1MHz
| | C10 | 2.55 | 2.90 | VR=10V,f=1MHz
| 容量変化比 | n | 10.5 | − | − | C1/C10
| 直列抵抗 | rS | − | 1.0 | Ω | VR=5V,f=470MHz
| 組内容量偏差 | Δ C/C * | − | 2.0 | % | VR=1〜10V,f=1MHz
|
*連続テーピング方式(C.C方式)採用のため、任意の連続した10個に対し、組内容量偏差を管理しています。
組内容量偏差の計算方法は次の通りです。
Δ C/C=(Cmax - Cmin)/ Cmin×100(%)
以 上
|