日立製作所は、このたび、レーザーレベラーやレーザーマーカーなどの産業・計測器分野向けに、
発振波長635nm帯で、15mWの高出力および動作温度50℃での連続動作を実現した赤色半導体レ
ーザダイオード「HL6321G」、「HL6322G」を製品化し、平成10年6月からサンプル出荷を開始します。
赤色半導体レーザダイオードは、現在、レベラー等の測量器や医療機器のガイド光、光ストレージ
などに幅広く用いられていますが、視感度の向上や高出力化、広い動作温度範囲の実現という技
術課題があります。
なかでも、野外で使用されるレーザーレベラー、レーザーマーカー等の見た目の明るさが重要な製
品では、発振波長635nm帯での高出力製品のニーズが高まっています。
当社は、レーザーレベラー等向けに、すでに635nm帯の短波長で5mW、10mW出力の赤色半導体
レーザダイオードを量産中です。しかし、高出力が必要な場合は、670nm帯や780nm帯で光出力15m
W以上の半導体レーザダイオードを採用し、さらにレーザービームを確認するために専用のレシー
バーが必要でした。
そこで、今回、発振波長635nm帯で光出力15mWの高出力、および広温度動作範囲(Topr=-10〜
50℃)を実現した赤色半導体レーザダイオード「HL6321G」、「HL6322G」を製品化しました。
本製品は、傾斜基板を用いたAlGaInP多重量子井戸活性層(注1)構造の採用と、その結晶成長に
MOCVD(注2)技術を駆使し、活性層の層数、層厚、キャリア濃度などの構造パラメータの制御を最
適化することにより、発振波長635nm帯で安定したシングルモード発振(注3)を可能としました。
さらに、高出力15mWを実現するため、レーザダイオードチップ端面反射膜厚の最適化を図ると同
時に、高出力化に伴うレーザダイオードチップ端面の損傷を防止する構造を採用しました。この新
技術を導入したことで、クラス最高レベルのPo=15mW(連続動作)、Tc=50℃の高温連続動作が可能
となり、高出力・広動作温度範囲が要求される分野にも対応できます。
本製品により、発振波長635nm帯のレーザダイオードは光出力5mW品、10mW品、15mW品のライ
ンアップとなり、ユーザは用途に合わせた選択が行えます。また、パッケージは、モニタ用フォトオー
ドを内蔵した完全気密タイプ(当社型名:Gタイプφ9mm)を採用しています。なお、「HL6321G」はプラ
ス電源駆動が可能なリード接続品、「HL6322G」はマイナス電源駆動が可能なリード接続品で、既存
の駆動回路に合わせた製品の選択が可能です。
今後は、さらに高出力である30mWクラスの製品開発を行っていきます。
注1)多重量子井戸活性層:レーザダイオードの活性層を、材料組成を変えた結晶に繰り返し成長さ
せた構造。クラッド層と活性層のバンドギャップ差が大きくなり、高い光閉じ込め効果が得られる
とともに、低しきい値電流化、温度特性の向上が図られます。
注2)MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition):有機金属の分解による気相成長法。 結晶
成長技術の一つで量産性に優れています。
注3)シングルモード:レーザダイオードから単一波長のみが出力されている状態。
<応用製品例>
・レーザーマーカー、レーザーポインタ
・レベラー等測量器、位置検出、医療機器のガイド光
・アミューズメント
・教育用光学実験用光源
<価 格>
製品名 サンプル価格(円)
HL6321G 13,000
HL6322G 13,000
以 上
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