日立製作所は、このたび、「グラフィック液晶コントローラドライバ」シリーズのラインアップ強化として、
デジタル携帯電話、PHS、デジタルコードレス電話などの移動体通信機器の液晶表示システム用に、
1チップで96×42ドットのグラフィック表示(注1)と16桁5行のキャラクタ表示(注2)を切り替え可能なグラ
フィック液晶コントローラドライバ「HD66726」を製品化し、平成10年5月からサンプル出荷を開始します。
また、96×26ドットのグラフィック表示と16桁3行のキャラクタ表示を切り替え可能な「HD66725」も併せ
て製品化し、同年5月よりサンプル出荷を開始します。
今回の2製品は、キースキャン機能も内蔵した上、実装形態としてCOG(注3)やCOF(注4)、TCP(注5)
などを品揃えしており、ユーザの様々なニーズに対応することが可能です。
携帯電話やPHSなどの移動体通信機器は、市場の急成長に伴い、さらなる低消費電力化、多機能
化、小型・軽量化および低コスト化が追求されています。一方、多機能化や高付加価値化のニーズに
対応し、小型液晶表示パネルにも、従来のカナ・英数字を中心としたキャラクタ表示だけでなく、漢字
メッセージ通信やゲーム、さらにはスケジューラ等の付加機能を実現するため、グラフィック表示が必
要となっています。
キャラクタ表示は、文字コードを指定するだけで、キャラクタジェネレータに登録されたキャラクタフォ
ントを表示できるため、ソフトウェアの処理負担は軽いものの、任意の図柄を表示することができませ
ん。また、グラフィック表示は、ドット単位のソフトウェア処理で任意の図柄を表示できるものの、マイコ
ンのソフトウェア処理負担が重くなってしまいます。
そこで、当社は、システムの表示内容に応じてキャラクタ表示とグラフィック表示を切り替えることが
可能な「グラフィック液晶コントローラドライバ」を開発しました。すでに、72×26ドットのグラフィック表示
と12桁3行のキャラクタ表示の切り替え表示が可能な「HD66724」を業界で初めて製品化し、現在量産
中です。そして今回、さらに大きな画面表示に対応した96×42ドットのグラフィック表示と16桁5行のキャ
ラクタ表示の切り替え表示が可能な「HD66726」と、96×26ドットのグラフィック表示と16桁3行のキャラク
タ表示の切り替え表示が可能な「HD66725」を製品化しました。
今回の2製品は、表示サイズを拡大した上、低消費電力型の液晶駆動電源回路、4×8個のキース
キャン制御回路、3個のLED・バックライト制御回路等を内蔵しています。
また、マイコンとのインタフェース用に、クロック同期式シリアルインタフェース機能、および68系/80系
の8ビットまたは4ビットのバスインタフェース機能を内蔵しています。内蔵レジスタやRAMへのアクセス
は、内部の動作クロック周波数に依存せず、高速に連続書き込みが行えるため、シリアルインタフェー
スでも十分な高速データ転送を実現できます。
さらに、キースキャン機能やポート制御機能の内蔵により、3本のシリアルインタフェースで液晶表示と
キーマトリクス含む操作パネル全体を制御できます。そのため、部品点数の削減、およびマイコンの入
出力ポート数も20ポート以上削減可能で、システムの小型軽量化、低消費電力化、低コスト化が図れま
す。
さらに、グラフィック表示時には、96×42ドット(HD66726)または96×26ドット(HD66725)のビットマップ状
の表示RAMにダイレクトに表示データを書き込めます。この表示RAMに、漢字フォントや図柄を書き込
むことで、漢字メッセージ表示やゲームなどをサポートできます。また、キャラクタ表示時には、8ビットの
文字コードから自動的にキャラクタフォントパターンを発生します。内蔵のフォント数は、6×8ドットサイズ
で432種の固定
フォントと、64種のユーザプログラマブルフォントを備えているため、太文字フォントや多国籍フォントなど
多様なキャラクタを表示することが可能です。なお、ピクトグラムやアイコンなどのマーク表示用には、ブ
リンク制御も行うことができます。
一方、液晶表示システムの低消費電力化への対応として、内部の動作クロック周波数を従来の120kHz
動作から32kHz動作に下げ、さらに液晶コントローラドライバ部に機能ブロック単位で不必要な動作クロッ
クを停止させるイベントドリブン動作機能を採用しています。また、「待機中」などのマーク表示や、表示画
面の一部を使用した日時表示などを行う場合、液晶駆動デューティと駆動バイアス、および液晶駆動電
圧を低くすることで、消費電力を当社従来品の約50 % 以下に大幅に低減させるパーシャル表示オン機能
を新たにサポートしました。内部発振クロック停止機能(スタンバイ機能)や液晶駆動電源オフ機能と合わ
せ、システムの動作状態に応じたきめ細かなパワーマネージメントが可能です。
これにより、3V動作での画面全体のフル表示時に「HD66725」で約150マイクロW、「HD66726」で約210マ
イクロW、待機中のマーク表示時に60マイクロW、非表示時(スタンバイ時)に約3マイクロWと、液晶駆動電
源系を含む液晶表示システムのトータル消費電力を大幅に削減できます。
実装方法としては、LCDガラスに直接フェースダウンで実装するCOG実装やフレキシブルフィルム基板
上に同じくフェースダウンで実装するCOF実装、LCDガラスとヒートシールを介して接続するTCP実装に対
応します。さらに「HD66726」では基板上にワイヤボンディングで実装する COB(注6) 実装にも対応可能で
す。
また、COG実装時は実装するガラス面積を最小限に抑え、チップ幅を2.51mmのスリム形状にしています。
今後は、今回の新製品をベースに、さらに大画面サイズに対応した製品を展開し、ラインアップの充実を
図っていきます。
注1)グラフィック表示:ビットマップ状の表示RAMを内蔵し、マイコンは各ドット単位の表示データを書き換
えることで、漢字やゲームなどの任意の図柄を表示できる。
注2)キャラクタ表示:フォントパターンを発生するキャラクタジェネレータを内蔵し、マイコンは1バイトの文
字コードを指定するだけで、簡単にキャラクタジェネレータ内のカナ・英数字などを表示できる。
注3)COG(Chip On Glass):金バンプ付きチップをLCDガラス上に直接フェースダウンで実装する方法。
注4)COF(Chip On Film):金バンプ付きチップをフレキシブルフィルム基板に直接フェースダウンで実装す
る方法。
注5)TCP(Tape Carrier Package):薄膜テープ上にチップをマウントしたパッケージ。超薄型実装が可能。
注6)COB(Chip On Board):ベアチップ(アルミパッド部が露出したチップ)のアルミパッド部にワイヤボンデ
ィングで基板と配線して実装する方法。
<応用製品例>
・デジタルセルラー(PDC 、GSM 、CDMA他)、PHS、ページャ
・デジタルコードレス電話、相手先電話番号表示機能付き電話、多機能ビジネス電話
・ポータブルMD、簡易携帯端末(電子ウォレット、POS端末など)
<価 格>
製品名 | 表示サイズ | 出荷形態 | 実装形態 | サンプル価格 |
HCD66725BP | 96×26ドット | 金バンプ付きチップ | COG、COF | 300円 |
HD66725TA0 | 96×26ドット | ストレート | TCP TCP | 500円 |
HCD66726BP | 96×42ドット | 金バンプ付きチップ | COG、COF | 400円 |
HCD66726 | 96×42ドット | ベアチップ | COB | 380円 |
HD66726TB0 | 96×42ドット | 折曲げ | TCP TCP | 600円 |
以 上
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