日立製作所は、このたび、携帯電話や小型携帯端末向けに、JIS第一水準と第二水準の漢字表示
ROMを内蔵し、10桁4行表示が可能なグラフィックス液晶コントローラドライバ「HD66732」を業界で初
めて製品化、平成10年4月よりサンプル出荷を開始します。また、ハングルフォントや中国語フォント
に対応した製品も開発し、同年7月よりサンプル出荷を開始します。
本製品は、大容量のフォントROMを内蔵したため、従来外付けであった漢字キャラクタジェネレータ
ROMが不要となり、マイコンにおける漢字フォント(字体)へのソフトウェア処理時間も約1/60(当社比)
と大幅に低減しています。また、漢字表示に加えてフルグラフィックス表示機能も備えているため、文
字表示以外にゲームなどの付加機能の表示にも対応可能です。
現在、小型液晶パネルは、セルラやPHS、ページャ、コードレス電話などの通信機器分野で幅広く
使用されています。なかでも、最近のセルラやPHSでは、機器の高性能・高機能化に伴い、従来の
カナ・英数字のみの液晶表示から、漢字を含めた本格的な日本語表示が求められています。
また、韓国ではCDMA(注1)やPCS(注2)、中国語圏ではGSM(注3)などのデジタルセルラが立ち上
がり、利用者が広がるとともに、自国語のハングル文字や中国語表示への転換要求が高まってい
ます。さらに、通信サービスの多様化・高付加価値化に対応するため、漢字アドレス帳などの文字中
心の表示に加え、ゲームや地図などのグラフィックス表示も併せて要求されつつあります。
従来、漢字やハングル・中国語文字を表示する場合は、ビットマップ状のRAMを内蔵した液晶ドラ
イバと、漢字/ハングル/中国語キャラクタジェネレータROMのチップセットでシステムを構成する
必要がありました。しかし、フォントパターンをRAM内蔵ドライバに展開するたびに、マイコンのソフト
ウェア処理負担が著しく増大し、マイコンが本来のデジタル通信処理を行う際のネックとなってしまい、
次世代デジタルセルラの高性能・高機能化や低消費電力化を困難にしていました。
本製品は、複雑な漢字/ハングル/中国語フォントパターンを展開するキャラクタジェネレータ
ROMやフルグラフィックス表示に必要なビットマップRAMを1チップに内蔵しており、従来のRAM内
蔵液晶ドライバで漢字/ハングル/中国語キャラクタジェネレータROMを外付けしていた場合と比較
し、実装スペースで約1/2(当社比)とコンパクトな液晶表示システムを実現できます。また、マイコンか
ら2バイトのJIS準拠の文字コードを受け取るだけで容易に漢字/ハングル/中国語表示が行えるた
め、フォント展開に伴うマイコンのソフトウェア処理負担を約1/60(当社比)と大幅に低減できます。さら
に、低消費電力型液晶駆動用電源オペアンプなどの内蔵により、液晶駆動に必要な消費電流を約
1/3(当社比)に低減しました。
表示サイズは、全角文字換算で10桁4行(40文字相当)です。また、電話番号などの英数字を半角文
字で表示することで、限られた表示画面サイズ内で表示文字数を増やすことも可能です。11×12ドッ
トの全角フォント用キャラクタジェネレータとしては、漢字バージョンではJIS第一水準と第二水準の漢
字、および非漢字に準拠した約8,000種を内蔵しました。また、英数字など6×12ドットの半角フォントを
256種、ユーザが自由に設定可能な全角のユーザフォントを40種内蔵しています。
さらに、120×52ドットのフルグラフィックス表示も可能です。漢字やグラフィックス表示に加え、200個
のマークを表示可能なセグメント表示も備えており、ブリンク(点滅)機能との組み合わせによりバッテリ
切れアラームなどの表示が行えます。漢字表示とビットマップ状のフルグラフィックス表示を重ね合せ
て表示させるスーパインポーズ表示機能も備えているため、より多彩な液晶表示が可能です。
その上、小型液晶パネルに多くの情報を表示するため、上下方向へドット単位に制御できる垂直ス
ムーススクロール機能をサポートしました。従来、ドット単位に点灯・非点灯制御を行うビットマップ表示
方式でのみ実現可能であったスムーススクロール表示を容易に処理でき、マイコンのソフトウェア負担
もほとんどかかりません。
なお、4×8個(計32個)のキーマトリクスを制御できるキースキャン機能を内蔵しており、液晶パネルと
キーボード部分を1チップで制御できるため、システムの小型化・低コスト化を実現することも可能です。
また、電源電圧3V時に最大12Vの液晶駆動電圧を発生する4倍昇圧回路の内蔵により、3V単一電
源動作を実現しています。さらに、液晶駆動デューティ(注4)や液晶駆動バイアス、昇圧回路の出力倍
率をすべてソフトウェアで制御できるため、システムの待機期間中などに液晶画面内の一部の領域を
選択的に駆動する場合、液晶駆動バイアスと液晶駆動電圧を低くし、消費電力を抑えることが可能で
す。なお、表示を完全に行わない期間中には、スタンバイモードや昇圧回路の停止機能などにより、
セット全体の消費電力を大幅に節約できます。
出荷形態としては、TCP(注5)テープ上でチップとLCDガラス間を折曲げて実装することが可能な折
曲げTCP品と、COG(Chip On Glass)実装(注6)やCOF(Chip On Film)実装(注7)が可能な金バンプ付
きチップ品を揃えています。また、折曲げTCP品は、ヒートシールを介さずに直接LCDガラスに接続す
ることが可能です。
注1)CDMA(Code Division Multiple Access):符号分割多元接続方式の次世代デジタルセルラ
注2)PCS(Personal Communication System):次世代簡易型携帯電話
注3)GSM(Global System for Mobile communications):欧州とアジア(日本や韓国を除く)を中心に広
く普及しているデジタルセルラ。
注4)液晶駆動デューティ:液晶画面の1ライン駆動時間と、そのラインで構成される1フレーム時間
との比。
注5)TCP(Tape Carrier Package):フィルムテープ上にチップを実装したパッケージ。
注6)COG(Chip On Glass):LCDガラス上に直接金の突起電極(金バンプ)を付けたチップをフェース
ダウンで実装する方法。
注7)COF(Chip On Film):フィルム状の基板に金バンプ付きチップをフェースダウンで実装する方法。
コンデンサや抵抗などの外付け部品も併せて実装可能。
<応用製品例>
・PDC、GSM、CDMA、PCS等のデジタルセルラ
・デジタルコードレス電話
・ページャ、小型携帯端末
・多機能ビジネス電話、PBX端末、ビジネスFAX等のオフィス機器
<価 格>
製品名 | 出荷形態 | 1万個ロット時の単価(円) |
HD66732A00TB0L | 折曲げTCP | 800 |
HCD66732A00BP | 金バンプ付きチップ | 600 |
以 上
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