日立製作所は、このたび、国内のデジタル衛星放送用スクランブルシステム
Multi2(注1)を内蔵したデマルチプレクサ(注2)「HD814250FD」を製品化し、平成
9年10月よりサンプル出荷を開始します。
本製品は、セットトップボックス(以下STB)において、目的とするチャンネルを
選択するためのデータ処理を行うLSIです。すでに当社が製品化しているMPEG2
(注3)1チップデコーダ「HD814210FD」、および32ビットRISCプロセッサ「SH-3
(SH7708)」とのチップセットにより、国内のデジタル衛星放送を受信するSTBシス
テムの大半を構成できます。
近年、米国、欧州に続き、日本でも多チャンネル放送を特徴とするデジタル衛星
放送が立ち上がりつつあります。この放送を受信するためのSTBシステムには、動
画像の伸長を行うMPEG2以外に、目的とするチャンネルを選択するトランスポート
ストリーム(注4)のデマルチプレクサ、デスクランブラ(注5)等のLSIが必要であり、
現在STBの小型化、低コスト化のためにこれらのLSIの1チップ化が求められていま
す。
そこで、当社では、このようなニーズに対応するため、すでにMPEG2オーディオ
/ビデオ1チップデコーダ「HD814210FD」を製品化しています。そして今回、日本
における標準デスクランブルシステムであるMulti2デスクランブラをDVB(注6)仕様
準拠のトランスポートデマルチプレクサに内蔵したLSI「HD814250FD」を製品化し
ました。
「HD814250FD」は、0.35ミクロンAI3層CMOSプロセスを採用し、デスクランブ
ル機能、トランスポートデマルチプレクサ機能を実現するとともに、シリアルコミ
ュニケーションインタフェースやスマートカードインタフェース、I2Cバス(注7)イ
ンタフェース等のSTBシステムに必要な周辺機能を内蔵しています。
また、デジタルオーディオ信号出力機能も内蔵しており、STBシステムを容易に
構成できます。パッケージはQFP208ピンで、小型の面実装が可能です。
また、当社は、より高性能でコンパクトなシステム開発をサポートするために、
本製品とMPEG2の1チップデコーダ「HD814210FD」、32ビットRISCプロセッサ
「SH-3(SH7708)」のチップセットを提供します。
OSD機能(注8)等を内蔵し、16MビットシンクロナスDRAMとのインタフェースをサポ
ートした「HD814210FD」と、高性能かつ低消費電力を実現した「SH-3」、および
本製品はそれぞれ直結することができるため、システムを容易に設計できるととも
に、部品点数の低減も可能です。
そして、本チップセットにMPEG2デコード用の16MビットシンクロナスDRAMと
「SH-3」用のROM/RAMを追加するだけで、国内のデジタル衛星放送用STBのデコー
ドシステムを構成でき、システム開発の早期化が図れます。
なお、今後の展開としては、よりコストパフォーマンスに優れたシステム1チッ
プ化製品の開発を計画しています。
(注1)Multi2:日本国内におけるデジタル衛星放送用のスクランブルシステム。
アルゴリズムは(株)日立製作所が開発した。
(注2)デマルチプレクサ:多重化したデジタルデータ列から目的とする情報を取り
出す装置。
(注3)MPEG2(Moving Picture Experts Group Phase 2):動画像圧縮伸長技術の
国際標準規格。
現行TV並みの画像品質に対応。
(注4)トランスポートストリーム: 特にデジタル衛星放送システムに用いられる
デジタルデータ転送形式。
デマルチプレクサは、このデータ転送ストリームから画像音声、およびシス
テム制御に使用するデータを取り出す。
(注5)デスクランブラ:機密保持のためにスクランブルをかけた送信データを、受
信側で復元する装置。
(注6)DVB(Digital Video Broadcasting):欧州のデジタル衛星放送システム。
(注7)I2Cバス:オランダのフィリップス社が開発した双方向シリアルバスシステ
ムの規格。
同規格に基づく製品同士であれば、2本の配線で複数の周辺IC間の相互デー
タ転送や制御が可能。
(注8)OSD(On Screen Display)機能:再生動画像上に文字やキャラクタを表示させ
る機能。
<応用機器例>
・デジタル衛星放送用セットトップボックス(日本国内向け)
<価 格>
製 品 名 サンプル価格(円)
HD814250FD 3,200
以 上
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