日立製作所はディスク片面4.7GBの記録容量をもつDVD−RAM(書換可
能なDVD)の基本技術を開発し、基本動作を確認しました。片面4.7GBの記
憶容量を実現するために、媒体の信号対雑音比(S/N)を大幅に高めるとともに、
高精度な記録技術を開発したことにより、高密度化を図りました。既に規格合意さ
れている2.6GB DVD−RAMのフォーマットを継承しているため、2.6GB
DVD−RAM及び4.7GB DVD−ROMとの基本的な互換性を確保していま
す。
次世代マルチメディアの映像・情報記録媒体であるDVDは、映像、音楽、コン
ピュータ等様々な応用が可能であり、映像再生用のDVDビデオ、コンピュータ用
のDVD−ROMの登場によって、市場が立上り始めています。DVDファミリー
には、統一的な映像・情報インフラとしての大きな期待がかけられており、大容量
のDVD−RAMに対しても、他のDVDファミリーとの相互互換性は必要不可欠
です。
当社では、DVD事業について、業界に先駆けて昨年6月に標準速DVD−
ROMドライブを、本年3月に2倍速DVD−ROMドライブをサンプル出荷する
とともに、本年6月にはDVD−RAMを世界で初めてサンプル出荷するなど、常
に積極的な取り組みを行ってきました。また、DVDフォーラムにおいては、
DVD−RAMワーキンググループの主査として幅広いユーザーの意見を取り入れ
ながら、規格統一の中心的な役割を果たしています。
今回の技術開発においては、再生装置に新たな負担をかけない大容量化を目指し
ました。物理的なフォーマット(ディスク面上の情報マークの配列を決める規定)
として、2.6GB DVD−RAMのフォーマットを継承し、トラックピッチとビ
ットピッチをそれぞれ詰めました(*1)。再生信号の特性に深く関わるビットピ
ッチはDVD−ROMと同程度にまで詰め、ランド・グルーブ構造の特性が活かせ
るトラックピッチの方をDVD−ROM以上に詰めています。
これらの記録再生条件を満たすため、今回開発した技術は以下の通りです。
(1) ハイコントラスト媒体の開発により、再生信号S/Nが大幅に改善され、
高密度記録時でも高いデータ信頼性を維持することが可能となりました。
ハイコントラスト媒体とは、コントラスト強調層(*2)と熱緩衝層
(*3)の導入により、「再生信号の高S/N化」とデータ書換時に重要な
「熱吸収一定化」とを初めて両立させた媒体です。
(2) 適応型記録波形制御(*4)の開発により、光スポットサイズよりも遥か
に小さな記録マークも正確に形成することが可能となりました。
以上の技術開発により、いずれのDVDドライブでも再生可能となる4.7GB
DVD−RAMの基本技術を確立しました。本技術をもとに、本年秋スタートの
4.7GB DVD−RAMの規格化に積極的に貢献していく予定です。
【補足説明】
(※1)今回開発したDVD-RAM技術の主な仕様
項目 | 2.6GB DVD−RAM | 4.7GB DVD−RAM | 4.7GB DVD-ROM |
| | (本開発) |
直径 | 120 mm | ← | ← |
基板厚 | 0.6 mm x 2 | ← | ← |
記録膜 | 相変化型記録膜 | ← | − |
記録・再生 | 650 nm | ← | 650/ 635 nm |
レーザ波長 |
レンズ開口数 | 0.6 | ← | ← |
記録ビット長 | 0.41 - 0.43μm | 0.28 - 0.30μm | 0.27μm |
記録トラック幅 | 0.74 μm | 0.59 μm | 0.74 μm |
トラック | ウォブルランド | ← | スパイラルピットフォーマット |
| グルーブ方式 | | 列方式 |
物理アドレス | ピット | ← | ← |
変調符号 | 8/16,RLL(2,10) | ← | ← |
セクタ長 | 2048バイト | ← | ← |
エラー訂正 | 16セクタ | ← | ← |
ブロック長 |
エラー訂正符号 | リードソロモン積符号 | ← | ← |
記録方式 | ZCLV | ← | CLV |
(*2)コントラスト強調層
コントラスト強調層の開発により、従来は50%程度であったコントラスト(記
録部と未記録部との反射率差)を、4.7GB DVD-ROMのコントラストを超える
80%程度まで高めることができました。この結果として再生信号の大幅な高
S/N化が可能となりました。
(*3)熱緩衝層
相変化記録は、媒体を急冷してアモルファス化したり、徐冷して結晶化したりす
ることによりデータの記録を行っています。そのため、正確にオーバーライトす
るためには、記録膜の温度制御の正確さが鍵となります。今回、熱緩衝層を新た
に付加することにより、オーバーライトする前の記録状態にかかわらず、記録膜
では一定の熱吸収条件が実現できるようになりました。
(*4)適応型記録波形制御
記録マークとその前後のスペース長に応じてレーザのパワーとパルス幅を変え、
熱の冷却過程を常に一定にして正確なマークを形成する技術。
以 上
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