日立製作所は、この度、医薬品、食料などの幅広い分野における有害物質や生体
内の代謝物等の高感度分析を可能とした、液体クロマトグラフ質量分析システム
「M−8000形」を製品化し、8月26日より販売を開始します。
本製品は、微量な試料で、より高度な分析が可能な「3DQMS」を採用し、複
雑で微量な試料の効果的な分析を実現するとともに、「MS/MS機能」の標準搭
載により、1台で従来の質量分析部(MS)10台分の測定が可能です。また、
WindowsNT(R)日本語版の採用により、快適な操作環境を提供します。
液体クロマトグラフ質量分析システムは、医薬品などに含まれる極微料の「不純
物」や、人や動物の体の中で消化吸収された時に生ずる「代謝物」、さらに食料に
含まれる「残留農薬」、河川水に含まれる「有害物質」の測量や内容判定など、幅
広い用途に用いられています。
しかし、最近ではユーザーの分析技術の多様化などにより、装置の感度や使い勝
手の向上、低価格化、さらには多種多様な微量物質を分析可能な装置の開発などが
求められています。
そこで、当社はこのような市場ニーズに対応し、液体クロマトグラフ質量分析シ
ステム「M−8000形」を製品化しました。
従来の液体クロマトグラフ質量分析システムのMSでは、試料を測定する場合、
その試料の「イオン」をMS内で通過させて、目的とするイオンを選別する「フィ
ルタ方式」を用ていましたが、本製品では微量な「イオン」をMS内に蓄積させて
から、目的とするイオンを選別して分析を行う「3DQMS」を採用しています。
これにより、従来の分析装置が困難であった微量試料の質量や内容等の分析情報を
高感度で同時に得られます。
また、「イオン」がどのような構造になっているかを調査するためには、従来は
最初のMSで得られた「イオン」を別のMSで分析する必要がありましたが、本製
品では1台でMS10台分の測定を可能とする「MS/MS機能」を標準搭載して
おり、医薬品開発などの分子構造解析において、高度な定性情報と定量性を備え、
精密で豊富な分析情報をスピィーディに提供します。
さらに、微量試料をイオン化する新型のインタフェース(SSI)を搭載していま
す。従来のインタフェース(APCI、ESI)では、熱に不安定な多糖類やタンパ
ク質、ペプチドなどの微量試料は、イオン化しにくく、測定が困難でしたが、
SSIでは超高速噴霧でイオン化するため加熱する必要がなく、多糖類なども高感
度で分析できます。
一方、新たなユーザー操作環境として、OSにWindowsNT(R)日本語版を採用しま
した。トータルシステムの管理から分析諸条件の設定、データの自動定量、自動レ
ポート印刷までを、すべて日本語で対応でき、快適な操作環境を提供します。
<注釈>
*3DQMS:Three Dimensional Quadruple Mass Spectrometry(3次元Qマス)
分析部にイオンを蓄積した後、目的とするイオンを選別する方式。
従来のフィルタ方式と比較し、イオンを蓄積する分だけ高感度となります。
*MS/MS:Mass Spectrometry/Mass Spectrometry(マススペクトロメトリ/マ
ススペクトロメトリ)
従来は複数のMSで行っていた構造分析測定を、1台で行う機能。
MS/MS機能では、1台で従来のMSの10台分(最大)の測定が行えます。
*SSI:Sonic Spray Ionsource(ソニックスプレーイオン源)
*APCI:Atmospheric Pressure Chemical Ionization(大気圧化学イオン化)
*ESI:Electrospray Ionization(静電噴霧イオン化)
<価格および出荷時期>
製 品 名:液体クロマトグラフ質量分析システム「M−8000形」
価 格:2,900万円より
出荷時期:平成9年9月
販売目標:100台/年
<他社商標>
WindowsNT(R)は、米国およびその他の国におけるMicrosoft Corp.の登録商標
です。
以 上
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