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2002年6月5日
 
次世代超高速動作LSIを実現するCu配線用拡散防止膜形成技術を開発
― 従来比最大約30%の伝送遅延を低減可能 ―

    日立製作所 日立研究所(所長;児玉英世)は、このたび、LSIの信号配線であるCu配線の拡散防止膜として、Cu配線上のみに成膜可能な金属性拡散防止膜形成技術を開発しました。従来の絶縁性キャップ層を用いた場合に比べ、信号伝送遅延が最大約30%低減できる可能性を有しており、次世代の超高速伝送が必要なLSIへの適用が期待されます。

    近年、LSIの動作クロック周波数はGHzの領域に達し、さらに高周波数化、高速化が要求されています。そこで、信号伝送遅延(※1)を低減する目的で、配線としては電気抵抗の小さなCu配線、配線間の絶縁材料としては誘電率の小さな有機高分子系材料の導入が進められています。配線材料のCuは、プロセス温度で絶縁膜中を拡散してしまうため、拡散防止膜なしには使用できず、Cu配線を囲むように拡散防止膜を形成する必要があります。この拡散防止膜として、Cu配線の側壁および底面にはTaに代表されるような金属性の拡散防止膜が使われています。しかし、Cu配線上面には窒化シリコン等の絶縁膜が用いられています。この絶縁性拡散防止膜の誘電率が大きいため、配線間の絶縁層を低誘電率化しても、デバイス全体では高速伝送に必要な低誘電率化が達成できないという問題がありました。

    このような問題を解決するため、日立研究所では、無電解めっき技術を用い、メタルキャップ層(※2)と呼ぶ金属の拡散防止膜をCu配線上のみに形成する技術の開発に成功しました。メタルキャップ層は誘電体材料ではないため、配線間の絶縁膜に低誘電率材料を用いることで、高速伝送に対応したデバイス全体の低誘電率化が達成できます。この効果は、例えば絶縁性拡散防止膜として窒化シリコンを用いた場合に比べ、約30%の伝送遅延低減の効果となります。
    無電解めっき法(※3)によるメタルキャップ層形成技術は伝送遅延低減効果が大きいため、従来より検討されてきました。しかし、従来法ではめっき反応を開始させるため、Cu配線上に無電解めっき反応の触媒となるPd膜を形成する必要がありました。このPd膜はCu配線の抵抗上昇を引き起こす可能性がありました。また、Cu配線上にPd触媒を形成する工程を経ることで、必要のない部分へのめっき析出を起こさせる可能性が増大するため、プロセスマージンが狭いという問題がありました。
    日立研究所では、早くからこの問題に着目し、Cuが触媒として機能するような還元剤を選定することで、Pd膜を形成する工程を経ることなくCu配線上のみにメタルキャップ層を形成することに成功しました。開発したメタルキャップ層は高融点金属のタングステンを含有するコバルト膜で、約500℃の熱処理においてもCuの拡散を防止できる機能を有しています。

    開発しためっき液はアルカリ金属イオン等のデバイス汚染物質を一切含まず、LSI製造プロセスへの適合性も兼ね備えています。今後、Cu配線を採用した当社高速プロセッサの配線形成プロセスへの適用に向け、検討を行っていく予定です。

[補足]
(※1)信号伝送遅延
  これまで、LSI設計では高速動作に対応する技術として、トランジスタの微細化が進められてきましたが、トランジスタ間の信号伝送遅延が高速化限界を支配するようになってきました。この信号伝送遅延はトランジスタ間を繋ぐ配線の抵抗と、配線間に形成された絶縁層による寄生容量の大きさで決まります。配線としては電気抵抗が小さな材料、絶縁層としては誘電率の小さな材料を用いることが高速伝送に必須なデバイス構成となります。そこで、従来のアルミニウム配線に代わりCu配線が用いられ、また配線間の絶縁層としては誘電率の小さな有機高分子系材料の導入が進められています。

(※2)メタルキャップ層
  配線材料として使用するCu配線は四方を拡散防止膜で覆われています。Cu配線上面の拡散防止膜は、Cu配線形成後に形成する必要があるため、絶縁膜を用いてきました。これに対し、Cu上面に形成する金属性の拡散防止膜をメタルキャップ層と呼びます。

(※3)無電解めっき法
  めっき液中に溶解している金属イオンを、同じくめっき液中に溶解している還元剤で還元し、金属として析出させる方法のことを無電解めっき法と呼びます。無電解めっき反応が開始されるためには、還元剤による還元反応を起こさせる触媒が必要であります。従来技術では、還元剤に次亜リン酸塩を用いてきましたが、配線材料のCuは次亜リン酸塩による還元反応の触媒とはなりません。この場合、Cu配線上に触媒となるPdを予め析出させる方法が取られてきました。本開発技術では、還元剤にジメチルアミンボランを用いました。ジメチルアミンボランによる還元反応は、Cuが触媒となり得るため、本開発技術ではPdを析出させる工程がいらなくなります。

以 上

   



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