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2002年3月15日
電子メールソフトやワープロソフトなどの汎用アプリケーションが利用できる
ALS患者向け意志伝達装置「伝の心」を発売
−複雑なキー操作をより簡便に行える「親孝行」機能を搭載−

本体

ホームページ上に表示した
ウィンドウズ操作用文字盤の画面例

   日立製作所は、このたび、電子メールソフトやワープロソフトなどの汎用アプリケーションが利用できる、ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis:筋萎縮性側索硬化症*1)患者向け意志伝達装置「伝の心」を製品化しました。
   本製品は、頻繁に使う汎用アプリケーションの操作をより簡便に実行できるように、介護者が一連のキー操作をファイルに記録し、患者がその記録ファイルを呼び出すだけで再現・実行することができる「親孝行」機能を搭載しています。また、入力装置についてもエンハンスを行い操作性の向上を図っています。
   本製品は、株式会社日立ケーイーシステムズが4月1日から販売を開始します。

*1) ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis)とは…ALSは、脊髄の運動神経が侵され、全身の筋肉の萎縮が起こる、進行性の神経筋難病です。初期症状としては、足がもつれる、口がうまくきけない、などの症状が起こり、症状が進むと、歩けなくなったり、筆談や発語、さらには呼吸ができなくなります。しかし、脳機能は衰えません。このため、相手の言うことは分かっても答えることができない、自分の考えを伝えられないなど、コミュニケーション上の問題が起こります。病気の原因も治療法も不明で、厚生省の「特定疾患」に指定され、全国で約4,500人の患者がいるといわれています。

   当社は、1997年10月から、主にALS患者を対象に意志伝達装置「伝の心」を開発し、日立ケーイーシステムズから販売しています。「伝の心」は、文章作成、身の回りの機器操作、離れた人とのコミュニケーションを基本機能としており、現在までに約1,400台を出荷しています。操作原理は、カーソルが自動的にディスプレイ上に表示された文字盤やアイコン等の上を動くように設定しているので、希望の項目(アイコンや文字盤の文字など)にカーソルが移動したときに患者自身がスイッチを押して、その項目を選択するものです。1999年10月には、「伝の心」を介して患者が自ら操作できる身の回りの機器の種類を増やし、本を読むためのページめくり機や、家庭用テレビゲーム機の操作を行えるようにしました。2000年8月には、電子メール送受信やホームページ閲覧を可能にするなど機能の拡張を図っています。

■本製品の主な特長
 今回発売する新製品は、従来の専用アプリケーション(1スイッチで操作できるようにソフトウェアを「伝の心」専用にカスタマイズしたもの)に加え、汎用アプリケーションも利用できるため、パソコン初心者から中・上級者までの意志伝達装置として活用できます。

1.電子メールソフトやワープロソフトなどの汎用アプリケーションの利用を実現
従来の「伝の心」は、パソコン初心者にも操作しやすいよう、1スイッチで操作できる専用アプリケーションを開発し、電子メールやホームページの閲覧、文章作成を行っていました。このため、電子メールは画像以外の添付ファイルが受信できない、ホームページからダウンロードできない、飾り文字を使った文書作成ができない等の制約がありました。今回発売する新製品では、アプリケーションへのキー入力とマウス操作を1スイッチで行える機能を装備したことにより、汎用アプリケーションの利用を実現しています。
ウィンドウの「移動」「最小化」「最大化」等のように実行頻度が高く、且つスイッチを押す回数が多いウィンドウ操作をアイコン化しています。カーソルはアイコン上を自動移動するため、利用者は目的のアイコンにカーソルが移動したときにスイッチを押すだけで、面倒なウィンドウ操作を実行できます。

2.頻繁に使う機能は簡単に実行できる「親孝行」機能を搭載
介護者が、たとえば「○○さん宛の新規メールを作成するといった」一連のキー操作をファイルに記録し、その記録ファイルを患者自身が呼び出し、希望するアプリケーション操作を再現・実行できます。これにより、患者は複雑な操作を学習しなくともパソコンを操作することができ、また、介護者は患者に操作を繰り返し教える必要がなくなります。

3.目の動きや瞬きをCCDカメラで捉え、スイッチ入力を可能にする「表情スイッチ」(オプション)
症状が進み、動かせる身体部位が目や瞬きだけになった方が意志伝達装置を操作するために開発したものであり、瞬きなど顔の一部のわずかな動きを捉えてパソコンにスイッチ入力することを可能にします。
患者のわずかな動きをCCDカメラで撮影してパソコンで画像処理し、変化(動き)が設定値以上であれば、スイッチオンと判定します。これにより、従来顔などに取り付けていたセンサーが不要になります。また、今回、撮影部位の移動に追従する機能を設けることにより、床ずれ防止のため周期的に少しずつ動くエアマットを使用している方の利用も実現しています。

4.2点スイッチ操作*2(オプション)
脳性麻痺の方は、自動移動するカーソルが希望の項目の位置にきた瞬間に、タイミング良くスイッチを押せない場合があります。そこで、今回新たに利用者のペースでカーソルを移動させるスイッチを設け、もう一つの従来スイッチによりアイコンやメニュー等を確定する仕組みを提供することにより、脳性麻痺の方をはじめ重度障害者の方にも適した操作性を実現しています。
*2) 2点スイッチ操作による「伝の心」は、旧機能(専用ソフトウェア)のみの対応となります。汎用アプリケーションは利用できません。

   上記以外にも、受信した電子メール本文の音声読み上げやホームページの文字拡大、「私は○○と申します。」「すっかり春めいてまいりました。」等の文章作成によく使う定型句を簡単に一発登録できる機能などを追加して、使い易さの向上を図っています。

■価格および出荷時期

 *1: 「伝の心」の標準構成は以下のとおりです。
ノートパソコンまたはデスクトップパソコン(「伝の心」ソフトウェアをインストール済み, 搭載OS:Windows®98/ME, LAN機能標準装備)
タッチセンサー等スイッチ接続のためのUSBゲームポート変換アダプタとスイッチ接続ケーブル
プリンタ ・モデム ・学習リモコン
*2: 厚生労働省の指定した日常生活用具の購入補助限度額である50万円を考慮して、従来製品と同価格50万円(非課税品)に据え置いています。従って、給付制度の対象となる患者(身障者手帳1級(四肢麻痺)かつ言語障害3級)が購入される際、原則として費用負担がかかりません。なお、バージョンアップのソフトは販売会社に無料で提供しますが、販売会社の実施するバージョンアップ作業は有料となります。

   また、「表情スイッチ」を使用される場合は、以下のハードウェア/ソフトウェアを別途購入していただく必要があります。

(従来の「伝の心」に、「表情スイッチ」用ソフトウェアを組込んでも、パソコンの性能・OS等により、「表情スイッチ」が使えない場合があります。)

以 上




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