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2002年1月29日
 
高周波実装用低誘電損失樹脂材料を開発
―ナノテクノロジーにより誘電的特性と実装特性を両立―
  日立製作所 日立研究所(所長:児玉 英世)では、このたび、ナノテクノロジーを活用し、ギガヘルツ領域で使われる高周波モジュールや無線通信用アンテナ等に適用する実装用絶縁材料として、熱硬化性低誘電損失樹脂材料を開発しました。

   モバイル通信機器等に使われる高周波回路では、導体配線と絶縁材料において損失が生じ、特に絶縁材料における誘電体損失が深刻となってきています。これらは、信号伝達時に発熱やノイズ、高消費電力等の問題となって現れます。誘電体損失は周波数と材料の誘電正接に比例するため、今後使用する周波数がますます高くなるほど、誘電正接が低い材料への要求が高くなってきます。
   現在、電子部品メーカで広く使われているエポキシ樹脂では、この損失が大きくギガヘルツ領域の信号に対応できなくなっており、誘電損失の小さいフッ化炭素樹脂等を使用するケースが増えています。しかしフッ化炭素樹脂は加工性に乏しく、熱機械特性にも問題があります。
   本開発材料は、ギガヘルツ領域で使用可能な低誘電損失化と熱機械特性をはじめとする実用特性を、分子設計とナノテクノロジーによって実現することを目指したものです。
   ギガヘルツ領域における誘電正接の値は、主に材料構造中にある配向分極部位の外部電界による振動に遅れが生じ、運動エネルギーを消費する現象を反映しています。そこで樹脂の分子構造を非極性化することによって外部電界に誘起される運動を抑制する考えに沿って、熱硬化性の低極性化合物を分子設計しました。この化合物は、炭化水素を主成分とする化合物で、熱硬化が可能なことが特徴です。熱硬化性の二重結合をつなぐ結合基の構造を変えることによって機械特性や加工性を調整し、いずれも誘電正接の値が低い一連の熱硬化性低誘電損失樹脂材料の合成に成功しました。さらに、この材料をベース樹脂として他の樹脂とナノスケールでブレンドすることにより、高周波用実装材料として使用するための実用的な特性を備えた各種低誘電損失材料の調整も可能であり、このときもベース樹脂の中央の結合基を変えることで、ブレンド材のナノレベルの高次構造を制御することができます。
   現在、ベース樹脂の分子設計とポリマーブレンド技術により、プリント基板、コーティング樹脂、ポッティング樹脂等への適用に向けた最適化等、実用化検討を開始しています。

[開発材料の特徴]
(1) ベース樹脂の硬化物は誘電率、誘電正接が低く、高い耐熱性を持ちます。
(代表的な材料は硬化物の10GHzにおける誘電率が2.5、誘電正接は0.001とほぼフッ化炭素樹脂に匹敵し、ガラス転移温度が400℃以上、窒素中での熱分解温度が440℃です。)
(2) ベース樹脂は硬化温度が低く(150〜180℃)、加工性に優れています。
(3) ベース樹脂と他の樹脂とをブレンドすることにより、機械特性などを制御した実用的な高周波用低誘電損失実装材料を作製することが可能です。
(4) 無溶剤化、成膜性付与、フィルム化なども可能です。現在、各種ポリマーブレンドの開発により、プリント基板、コーティング樹脂、ポッティング樹脂等への応用に向けた検討を開始しています。

[用語説明]
   誘電体損失 誘電体に交流電場を加えると分子内に存在する双極子は電場に応答して振動するが、周波数が高くなると双極子の振動が電場に追随できなくなり、ずれ(摩擦のようなもの)を生じ、エネルギーが熱として損失する現象。
   誘電正接 複素誘電率の虚数部を実数部で割ったもので、誘電特性のうち損失を表す指標。
   非極性化 樹脂をはじめとする誘電体は炭素や水素等の異種元素の結合から構成されるが、それぞれの結合における電荷偏りが少なく、全体の双極子が小さい構造。

以 上




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