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2001年12月28日
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日立製作所 日立研究所(所長;児玉英世)は、このたび、熱硬化性絶縁樹脂として世界最高の熱伝導率を有するナノ構造制御型エポキシ樹脂を開発しました。従来の汎用エポキシ樹脂(0.19W/m・K程度)に比べ最高で5倍の熱伝導率(0.96W/m・K)を有しており、今後、高放熱性の絶縁材料が強く要望されているエレクトロニクス機器、電力・電気機器分野で革新的材料としての応用が大いに期待されます。 近年、エレクトロニクス機器のみならず 発電機・電動機等の電力・電気機器分野では、高性能化、コンパクト化が著しく進展し、内部から発生する熱は増大の一途をたどっています。このため、いかにして熱を効率良く放散させるかということがエネルギー効率、機器設計の上からも重要な課題となっています。現在、熱を放散しやすい機器の構造、効率の良い冷却方法も各種検討されていますが、電気絶縁部を担う熱硬化性樹脂の熱伝導率が金属やセラミックスに比べて2〜3桁小さいことが、根本的に放熱性の大きな障害になっています。従って、電気絶縁部の樹脂材料の熱伝導率を高めることが、次世代の機器の高性能化、コンパクト化の鍵を握っていると言えます。 電気絶縁部の熱硬化性樹脂材料の熱伝導性向上策としては、一般に樹脂よりも熱伝導率が2桁程度高いアルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)のような無機セラミックスのフィラ粉末を添加する手法が用いられていますが、製造工程における作業性が悪く、さらに 無機フィラの添加量が制限され、十分な熱伝導特性が得られていなかったのが現状でした。 このような課題を抜本的に解決するため、日立研究所ではナノテクノロジーにより熱硬化性樹脂自体の熱伝導率を高めることに成功しました。一般に熱伝導に有利な自由電子を持つ金属とは違い、自由電子を持たない絶縁材料では、熱伝導はフォノンによる伝導が支配します。熱伝導の低下を生むフォノンの散乱を抑制できるように樹脂材料中の構造をナノレベルで制御することができれば、配向や延伸等の物理的処理を施さずとも高熱伝導化が可能であると考えました。具体的な開発思想は、
このようなナノレベルの高次構造制御にビフェニル基のようなメソゲン構造を分子内に有するエポキシ樹脂が効果的であることを発見し、最適なメソゲン構造を分子設計することでその秩序性のドメインの大きさを制御可能とした結果、従来の汎用エポキシ樹脂(0.19W/m・K程度)よりも最高で5倍の熱伝導率(0.96W/m・K)となる樹脂を開発することができました。今までに知られている絶縁樹脂で最も熱伝導率が高いのは、熱可塑性樹脂の高密度ポリエチレンで0.6W/m・Kという熱伝導率です。熱可塑性樹脂は熱伝導率の向上に有利な結晶化度を高められるので、一般に熱硬化性樹脂よりも熱伝導率が高くなります。架橋構造をとるため結晶性を高めることができず、熱伝導率の向上が難しいと言われていた熱硬化性樹脂でこれを超える世界最高の熱伝導率を達成したことになります。 さらに、開発した樹脂内部のナノレベルで制御された高次構造の存在を、TEM(透過型電子顕微鏡)観察によって確認することにも成功しました。高熱伝導性発現の証拠となる約4nm周期の結晶相の層構造が存在し、電子線回折パターンの分布状態から、境界付近には結晶/非晶の中間状態のような不明瞭部分が存在することも確認されました。 開発した樹脂は、エレクトロニクス基板材料への応用には必須特性である低熱膨張性、低吸水性、高い高温弾性率特性も兼ね備えていることが特徴です。今後、日立グループで保有するナノテクノロジー技術を用いて、これら特性の他、接着性や長期絶縁信頼性等の評価を高め、実用化を進めていく予定です。 [用語説明] (1)フォノン:音子のこと。結晶格子の格子振動の伝播により伝わる。 (2)メソゲン:液晶分子に代表される配列しやすい化学結合基のこと。 (3)熱硬化性樹脂:熱を加えると硬化し、流動しなくなる樹脂 (4)熱可塑性樹脂:熱を加えると軟化し、流動性を発現する樹脂 | ||||||
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