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2001年10月16日

 

全階調において色合いが変化しない液晶表示技術を開発

−CRTなみの忠実な色再現を可能にするオーセンティックカラーIPS−

  

  日立製作所 日立研究所(所長:児玉英世)は、このたび、全表示色において、明るさが変化しても色合いが変わらない液晶技術(以下、オーセンティックカラー*1IPS*2)を開発し、色合いの差をハイエンドCRTと同等である色度差0.01以下、すなわち、人間の目では色の違いが識別できない忠実色再現を達成しました。

  当社では、既に製品化しているSuper-IPS*3方式の液晶ディスプレイにより、視野角に対する色合いの変化を完全に解消しました。近年、DTP*4やグラフィックデザイン等のプロフェッショナル向け市場だけでなく、インターネットを利用する電子商取引の市場拡大を背景に、より忠実な色再現に対する要求が高まっていますが、当研究所ではこれらのニーズに応えるべく、Super-IPS方式をベースとしたオーセンティックカラーIPS方式を開発しました。


■技術の詳細
  液晶ディスプレイは、液晶分子の縦軸と横軸を通る2種類の偏光に対する光路長の差で色合いが変わり、液晶分子の配列の状態が変化することで明るさが変わります。ところが、従来の液晶ディスプレイでは、液晶分子の配列状態が変化すると光学的な特性である光路長の差が大きく変化することから、明るさが変化すると色合いが変化するカラートラッキング現象が発生します。従来の液晶ディスプレイ上での色合いの差を色度図*5上の距離で定義される色度差で表すと、人間が容易に識別できる色度差0.08から0.1程度の変化が発生します。

  一方、Super-IPS方式の液晶ディスプレイの場合、液晶分子は基板面に平行な面に沿って回転するため、光路長の差は、従来の表示方式のように、明るさを変える液晶分子の配列状態には影響されず、原理的にはカラートラッキングが発生しません。実際には、液晶層の厚み方向に対して、僅かながら存在する不均一な液晶分子の配列状態により、多少のカラートラッキングが発生しますが、これによる色度差は人間の目により何とか色の違いを識別できるレベルに留まっています。
  光路長の差に着目して解析した結果、光路長の差を小さくするほどカラートラッキングを抑制できることを見出しました。一般に、光路長の差については最適とされる値があり、最適値と異なる値では液晶ディスプレイの表示性能を劣化させることになり、現実的ではないと考えられました。そこで、光学的な特性を決める液晶ディスプレイの構成を、液晶パネル、カラーフィルタ、バックライトの3種と考え、機能を分離して開発に取り組み、カラートラッキングを生じさせないという機能に特化した液晶パネルを開発し、この液晶パネルに適したカラーフィルタとバックライトを新たに開発することによって、Super-IPS方式液晶ディスプレイの高性能を保持しながら、カラートラッキングの解消に成功しました。


  新開発のオーセンティックカラーIPSは、印刷物なみの忠実な色再現表示をすることが可能です。この液晶パネルを用いることで、DTPやグラフィックデザインが要求する忠実な色再現に応える液晶ディスプレイ、また、インターネットショッピングで、商品を安心して購入できる液晶ディスプレイが可能になります。


  本成果は、10月16日から名古屋国際会議場で開催される第8回ディスプレイ国際ワークショップ/第21回ディスプレイ国際会議(AD/IDW '01)で発表します。


■用語説明
*1 オーセンティックカラー: 忠実な色、信頼できる色を再現するためのディスプレイ技術を、日立はオーセンティックカラーと称します。

*2 IPS: In-Plane Switchingの略で、液晶表示方式の一つ。液晶分子を基板に平行な平面内でスイッチングさせる方式で、広い視野角を実現できる。

*3 Super-IPS: IPSを改良したもので、ジグザグ電極構造を採用したことにより、視野角度に対する色変化をきわめて小さくでき、高色純度、高コントラスト比を得る。

*4 DTP: Desk Top Publishingの略で、カタログ、ポスター、雑誌等の商業印刷物をパソコンで作成して印刷機で印刷すること。

*5 色度図: 色を色合い(色相と彩度)だけで表したxとyの二元座標。明るさが異なっても色合いが同じであれば同じ色度座標(x,y)で表される。色度座標で表される2点間の距離が離れるほど、色合いが異なることを意味する。


 

 

以 上




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