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2001年9月17日
 
電子顕微鏡を用いた分解能1ナノメートル・感度0.1%の組成分析技術を開発
-- 最小線幅100ナノメートル以降の次世代半導体の評価に応用 --
  日立製作所 中央研究所(所長:武田英次)は、このたび、シリコン半導体中に含まれる0.1%程度の微量組成成分を、1ナノメートルの空間分解能で可視化する世界最高感度の組成分析技術を開発しました。この技術は、電子顕微鏡の観察時に試料から放射されるX線を検出するSTEM−EDX (*1)分析法の感度を、新たに開発した“試料ドリフト補償技術”によって約1桁向上させたものです。最小線幅が100ナノメートル以下となる次世代システムLSIや大容量メモリのプロセス評価、不良解析に有用な分析技術として期待されます。

  半導体の微細化とともに、検査・分析工程において要求される測定分解能は、ナノメートル(100万分の1ミリメートル)オーダにまで急速に高まっています。また、半導体デバイス内には様々な微量元素領域が形成されています。この微量元素領域を精度良く制御することが、半導体デバイスの性能を確保する上でますます重要となってきています。このような背景から、最小線幅が100ナノメートル以下となる次世代の半導体デバイスでは、Si半導体基板に含まれる0.1%程度の微量成分を、1ナノメートルの分解能で検出する高度な組成分析技術が必須となっています。

  分解能がナノメートルオーダの組成分析技術として、STEM(走査型透過電子顕微鏡) を応用した、“STEM−EDX分析技術”が開発されています。しかし、従来のSTEM−EDX分析技術では、0.1%オーダの微量成分を検出することは困難でした。この原因は、微量成分から放射されるX線が微弱なため、0.1%の成分を検出するために必要な信号量を得られなかったことによります。もちろん、検出時間を長くしてX線を積算すると、検出時間の1/2乗に比例して感度を向上することが可能です。ところが、感度を上げるために測定時間を長くすると、試料のドリフト(熱で位置が変化してしまう現象)が無視できなくなり、分解能を低下させるという問題がありました。例えば、0.1%の感度を得るまで測定を続けると、従来のSTEM−EDXでは、数10ナノメートルまで空間分解能が劣化していました。

  そこで、当社では、STEM−EDXにおける測定中の試料ドリフトを抑制するために、試料位置を1ナノメートル以下の精度で自動補正する“試料ドリフト補償技術”を開発しました。開発技術の特徴は、以下の通りです。
(1)   測定開始時の拡大像を参照画像として登録し、測定開始後から逐次入力する画像とのずれを1ナノメートル以下の精度で算出する技術を開発しました。求めた画像のずれが、試料ドリフトによる試料の移動量を示しています。
(2)   試料の移動方向に電子線の照射領域を自動で追従させる技術を開発し、電子線を常に対象領域上に走査させることを可能としました。電子線の走査情報とX線検出器の出力情報を組み合わせることで、1ナノメートルの精度で、2次元的な組成マッピングを得ることができるようになりました。
(3)   温度ドリフトによる移動量をもとに、試料位置を自動で補正しながら、X線のマッピング像を積算し、ドリフトの影響がない組成マッピングを実現することができました。
  この技術によって、はじめて、STEM−EDXを用いて0.1%濃度を積算する測定を行った場合でも、1ナノメートルの高分解測定を可能とすることができました。

  本技術の開発によって、これまで主にシミュレーションやモデル構造から推論していた半導体微量組成成分の設計に、実測データを導入することができます。また、半導体の歩留まりを低下させる汚染などの不良解析において、飛躍的に精度の高い情報が得られます。このように、本技術は、最小線幅100ナノメートル以降の半導体素子の設計スピードアップと高精度化を実現する基本技術となることが期待されます。

  本成果は、9月12日から工学院大学(東京)で開催された「日本電子顕微鏡学会 第17回分析電子顕微鏡討論会」で発表しています。

<用語説明>
(*1) STEM―EDX
  STEMは、Scanning Transmission Electron Microscopeの略で、走査透過電子顕微鏡とも呼ばれる。分析の場合、1ナノメートル、拡大像観察の場合、0.2ナノメートル程度に収束した電子線を試料上で走査し、得られた2次信号を走査電圧と同期させて2次元画像を形成する方式の電子顕微鏡。
  EDXは、Energy Dispersive X-ray Spectoroscopyの略。X線検出器でX線のエネルギーと個数を数えることで、電子線が透過した位置の材料の種類と濃度を知る方法。

以 上




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