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平成13年1月23日
次世代携帯電話方式W−CDMA対応
ベースバンド・モデムLSIの試作に成功
― 独自開発の高機能・低電力マルチエンジン
・アーキテクチャを適用 ―
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  日立製作所中央研究所(所長:武田英次)は、このたび、次世代携帯電話方式である
W-CDMA(広帯域符号分割多元接続)に対応したベースバンド・モデムLSIの試作に成功しま
した。  今回試作したベースバンド・モデムLSIは、当社独自のマルチエンジン・アーキテ
クチャを特徴としており、ベースバンド・モデムLSIをCPUやアナログ・インタフェースと共
に評価基板に搭載し、CPU上のドライバ・ソフトによりベースバンド・モデムLSIを外部から
駆動させることにより、 W-CDMA方式に求められる高品質音声通話機能や384キロビット/秒
という高速データ通信機能を確認しました。 

  W-CDMA方式は、ITU(国際電気通信連合)が標準化を進めてきた次世代移動通信システム
IMT-2000の無線規格の一つです。これによって携帯電話で有線電話並みの高品質の音声通話、
インターネットを快適に行なえる高速データ通信、同じ携帯電話をどこでも使える国際ロー
ミングなどのサービスが期待されています。
  携帯電話機は高周波アナログ信号を処理するRF無線部、アナログ信号から変換したデジタ
ル信号の変調・復調を行なうベースバンド・モデム部、ベースバンド・モデム部とのインタ
フェース制御や電話機のシステム制御を行なうDSPやCPU等から構成されています。今回、日
立はIMT-2000に向け、携帯電話機の中核部であるベースバンド・モデムLSIの試作に成功し
ました。

  新たに開発したベースバンド・モデムLSIの特徴は、独自開発したマルチエンジン・アー
キテクチャにあります。マルチエンジン・アーキテクチャとは、複数の演算プロセッサ(エ
ンジン)をファームウェア(注1)による制御で並列処理する方式です。従来の布線論理設
計方式(ハードウェア実装方式)に比べて、ファームウェアの変更でW-CDMA方式の多様な機
能を実現し、フレキシブルな設計を行なえる利点があります。また、マルチエンジン方式は
シングルプロセッサ方式(注2)に比べて並列処理によりクロック周波数を抑制し、エンジ
ン毎にきめ細かくクロックを制御することで消費電力を低減できる利点があります。モデム
信号処理に必要な機能にエンジンを特化することにより、シングルプロセッサとほぼ同等の
回路規模でLSI化することができます。

  今回試作したモデムLSIでは、4つのエンジンをファームウェアで制御することにより、
それぞれのエンジンに同期・変調・復調・誤り訂正の異なる動作を割り付けて並列処理を行
なっています。これにより、W-CDMA方式に必要な変復調信号処理(注3)、通信品質を向上
させるためのマルチパスRake受信処理(注4)、基地局を識別するセルサーチ処理などを実
現しました。
シングルプロセッサで実現した場合に比べてクロック周波数を約1/6以下に低減し、低電力
化を達成しました。

  なお、今回試作したモデムLSIはW-CDMA方式に対応していますが、本技術は現行携帯電話
方式や、次世代IMT-2000のもう一つの規格であるcdma2000へも適用が可能です。今後、現行
・次世代双方に対応するマルチモード携帯電話を視野に入れ、さらに将来に向けて多種多様
な通信方式や無線環境に適応できる柔軟な移動通信システムを目指していきます。

【注釈】
(1) ファームウェア:
  本来はハードウェアとソフトウェアの中間に位置するものという意味ですが、今回のモデ
ムLSIではエンジンを動かすための専用ソフトウェアのことを指しています。ファームウ
ェアはLSI上のメモリに記憶されています。4つのエンジンはファームウェアによって制御
され、それぞれ同期・変調・復調・誤り訂正の信号処理を行ないます。モデムLSI全体は外
部からドライバ・ソフトウェアによって制御され、ファームウェアを介して各エンジンが制
御されます。

(2) シングルプロセッサ方式:
  一つの演算プロセッサをソフトウェアで制御する方式のこと。W-CDMA方式の複雑な信号処
理の全てを一つのプロセッサに行なわせるため、マルチエンジン方式に比べてクロック周波
数を上げる必要があります。また、プロセッサのハードウェアと共に、メモリ制御や調停な
どを行なうためのソフトウェアも複雑になります。

(3) 変復調信号処理:
  CDMA方式では、音声やデータなどのデジタル信号に拡散符号をかけて変調する処理、変調
された信号を逆拡散して元のデジタル信号に復調する処理、復調された信号の誤りを訂正す
る処理などを行ないます。

(4) マルチパスRake受信処理:
 マルチパス現象とは、電波が建物などの反射により複数の方向から遅れて届くこと。Rake
とは英語で熊手のことで、ここでは複数方向から届く電波を集めて受信するという意味で用
いられています。マルチパスRake受信処理では、直接波や反射波(干渉波)を複数の逆拡散
器で個別に受信し、これらの信号の時間を重ね合わせることにより、受信信号強度すなわち
通信品質を向上させます。


                                                                       以上




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