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平成13年1月5日
世界で初めて300mmSIMOXウェハ製造用の
大電流酸素イオン注入装置を開発
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  株式会社 日立製作所 半導体製造装置グループ(グループ長&CEO:実松 俊弘)は、この
たび、LSIの高速化、低消費電力化を実現するSIMOXウェハ(*1)製造用の大電流酸
素イオン注入装置を開発し、ウェハメーカの協力により、世界で初めて300mmウェハの製
造に成功しました。
  これにより、300mmSIMOXウェハの量産化への道を開くとともに、SOI(*2)
技術を活用した高性能LSIの製品化の加速が期待できます。

  現在、半導体業界では、LSIの微細化、高速・低消費電力化、およびコスト競争力を高め
るため、ウェハの大口径化が進んでいます。そして、これらを実現するブレークスルーとして
期待されている技術が、絶縁膜上に形成された薄いSi層にデバイスを作り付ける薄膜SOI
技術です。SOI技術は、絶縁膜上に形成された薄いシリコン層にデバイスを作り付けるため、
トランジスタの寄生容量が減少でき、LSIの高速化、低消費電力化が可能となります。
  現在、この特長を生かし、薄膜SOI技術を採用したマイクロプロセッサが製品化されると
ともに、メモリデバイスや無線用の高周波デバイスなど、さまざまな分野への応用が検討され
ています。

  現在考えられている薄膜SOIウェハの製造技術には、SIMOX技術と貼り合せ技術の
2種類があります。SIMOX技術は、Si基板に酸素イオンを注入し、高温で熱処理を行い
SOIウェハを作成するものであり、貼り合せ方式と比較し、均一性に優れ、工程が容易でコ
スト的にも有利という特長があります。しかし、SIMOX技術では、ウェハを約600℃に
加熱した状態において、50〜100mAの大電流酸素イオンビームによって、汚染やパーテ
ィクルの付着を極力減らし、数時間にわたってウェハ全面に均一にイオンを注入することが必
要です。そこで、このような条件を満たすイオン注入装置の開発が、SIMOX技術の実用化
にとって最大の課題となっていました。
  そこで当社は、半導体製造装置向けに長年蓄積してきた大電流、長寿命を実現するマイクロ
波イオン源(*3)と、注入均一性・大口径基板への対応性に優れたイオン注入が可能なメカ
ニカルスキャン方式(*4)を採用したSIMOXウェハ量産用の大電流酸素イオン注入装置
の開発を進めてきました。
  高性能なデバイスを歩留り良く製造するためには、SOIウェハの品質が重要であり、なか
でもデバイス特性に影響する重金属汚染の低減、および歩留りに影響を及ぼす欠陥の低減が不
可欠です。そのため、本装置では、重金属汚染を低減するために、材料をビームラインや注入
室を汚染させないものに限定するともに、ランプヒータやビームダンプの構造を最適化しまし
た。また、注入イオンを遮蔽して埋込み酸化膜層に欠陥を生じさせるパーティクル付着を減ら
すため、ウェハの保持・搬送機構や保持材料等において多くの設計上の工夫を行っています。

  本装置を用い、200mm、300mmウェハについて基本性能の評価を行いました。埋込
み酸化膜層、表面Si単結晶層の面内膜厚分布を評価したところ、200mmウェハについて
は、±0.8%、300mmでは±1〜1.5%を達成し、現在の薄膜SOIウェハとしては
世界トップレベルの高い均一性が実証されました。これは、高い機械制御機能を付加した新し
いメカニカルスキャン方式と均一加熱を可能としたランプヒータ加熱制御の採用、およびビー
ム形状制御技術の高度化の成果といえます。

  さらに、イオン注入後の熱処理プロセスが確立されている200mmウェハについて、詳細
な品質評価を行いました。その結果、イオン注入中に付着するパーティクル数が従来の1/3
〜1/4と大幅に減少できたことにより、SIMOXウェハの最大の課題であった埋め込み酸
化膜の欠陥が大幅に低減され、重金属汚染も問題のないレベルであることが確認されました。

  今回の成果により、均一性に優れた300mmSIMOXウェハ製造の見通しが得られまし
た。今後は、マンマシンインターフェイスなどのソフトウェアの充実、注入データの蓄積を図
り、本装置の早期製品化を進めていく予定です。

  なお、本装置の概要については、平成12年12月6日から千葉県の幕張メッセで開催され
た「セミコンジャパン2000」でパネル展示しました。


<用語説明>
(*1)SIMOX(Separation by IMplanted Oxygen)技術
     Siウェハに酸素イオンを注入し熱処理を施すことで、Si表面に薄い単結晶Si層を
   保持したまま、表面から一定の深さに埋込み酸化膜層を形成し、SOI構造を形成する
   技術。このイオン注入は、通常、加速エネルギー約180keV、酸素イオン注入量4×
   1017イオン  /cm2、注入時の基板温度550〜600℃で行われ、その後、
   約1,350℃の熱処理を経て約100nmの膜厚の埋込み酸化膜層が形成される。

(*2)SOI(Silicon On Insulator)技術
     縁膜上に形成された薄いSi層にデバイスを作り付ける半導体技術。トランジスタの寄
   生容量が減らせるため、LSIの高速化、低消費電力化に有利である。SOIウェハは、
   通常、表面単結晶層、埋込み酸化膜層、Si基板の積層構造になっている。CMOS LSI
   に適用する場合は、表面単結晶層は30〜200nmと薄く、膜厚は±5%以下と均一で
   あることが求められる。このような表面単結晶層の薄いSOIウェハを、パワーデバイス
   用に用いる表面単結晶層が数μmと厚いSOIウェハと区別して、薄膜SOIウェハと呼ぶ。

(*3)マイクロ波イオン源
     磁場とマイクロ波(周波数:2.45GHz)の相互作用を利用し、希望のイオン種を含む
   ガスを電離して高密度のプラズマを生成、引き出し電界を印加してプラズマからイオンを引
   き出す方式のイオン源。酸素のような化学的に活性なガスに対しても長時間安定に大電流酸
   素イオンビームを発生できる。

(*4)メカニカルスキャン方式
     イオン注入には、ビームの位置を固定したまま、ウェハをビームに対して走査してウェハ
   全面にイオン注入するメカニカルスキャン方式と、ウェハは動かさずにビームを走査してウ
   ェハ全面にイオン注入するビームスキャン方式がある。メカニカルスキャン方式はウェハの
   高精度機械走査機構が必要であるが、ビームスキャン方式のようにビーム走査に伴うビーム
   形状変化の影響がない。ビーム形状が変化すると注入量が不均一となり、汚染の原因ともな
   る。特に、本装置のようにイオンビーム電流が大きい場合には、ビーム形状変化を小さく保
   ってビームスキャンを行うことは困難である。そのため、高均一・低汚染注入を実現するた
   めには、メカニカルスキャン方式が有利である。
     なお、実際の装置では、複数枚のウェハが円形のディスクの周辺に沿って保持される。
   本装置では200mmウェハの場合は18枚、300mmでは12枚。メカニカルスキャン
   の場合、このディスクを一定速度で回転させながら、ディスク全体を一方向に往復走査する。
   ビームスキャンではディスク走査の代りにビームを一方向に走査する。



                                                                            以 上




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