株式会社日立製作所(取締役社長:庄山悦彦)は、環境投資・環境活動の効率化と持続
的改善を推進のため、環境会計制度を1999年度より導入しました。
同制度は、環境活動に関わるコストと効果を定量的に評価するもので、1999年度の
結果は、費用が267.0億円、投資が67.6億円、経済効果が41.6億円となりました。
当社は、従来から、環境に配慮した製品づくり、生産活動、社会に向けた環境保全製品
/システムの提供を柱として環境活動に取り組んできました。また、1999年4月からは、
日立グル−プとしての環境経営の強化を目的に、グル−プ全体の環境経営方針を決定する
「環境経営会議」を設置するとともに、グループにおける環境活動の評価制度として、
「GREEN 21」を導入しました。これは、環境方針の展開度合い、省エネ・リサイク
ル状況、環境に配慮した製品アセスメントの実施状況など、環境活動を様々な角度から点
数評価することにより、グル−プ全体の環境経営の改善を図るものです。
今回の環境会計制度の導入に際しては、初年度として、まずは単独ベース(注)でのデ
ータを集計しました。コストについては、1997年度から公表してきた環境活動に関わ
る設備投資に加え、研究開発費用や環境保全設備の運転管理費用等の経常的費用額につい
ても対象としました。また、効果の面では、金額で評価する経済効果と、環境負荷抑制量
で評価する物量効果の両面から捉えることとしました。経済効果では、「確実な根拠に基
づいて把握される効果」を把握しました。物量効果では、「優れた自主技術・製品の開発
を通じて社会に貢献する」という当社の基本理念に基づき、製品の生産時における環境負
荷の抑制だけでなく、製品の使用時における環境負荷抑制効果についても算出しました。
さらに、環境効率(エコ・エフィシェンシー)として、環境負荷項目の費用あたりの削減量
を評価しました。
今後は、データの集計範囲をグループ会社に拡大していくとともに、集計・開示内容も
充実させていきます。環境会計制度の実施により、当社は、より合理的な環境経営を推進
し、環境保全と経済的成長が両立する活動を行い、社会に貢献していきたいと考えます。
注:日立製作所の事業所内で環境負荷を一体管理している関連会社のデータも一部含んで
います。
1.これまでの環境活動への取り組み
(1) 環境を配慮した生産活動…………………生産時の環境負荷低減
(2) 環境を配慮した製品づくり………………製品の使用時、廃棄時の環境負荷低減
(3) 社会に向けた環境保全システムの提供…環境保全製品/システムの開発・販売
2. 環境会計導入の目的
(1) 環境投資・環境活動の効率化と持続的改善の推進
(2) 企業姿勢の情報開示
・ 環境活動に関わる経営資源配分の開示
・ 環境技術・環境製品の情報開示
3.環境会計への取り組みと考え方
・ 当社は、環境会計制度の導入を1999年7月に決定し、財務部門と環境部門による
プロジェクトチームにより、環境会計の把握項目・方法に関して、検討を行って
きました。この間、環境庁が主催する「環境会計に関する実務者研究会」
(1999年6月発足)にも参画してきました。
・ 環境会計制度を、当社ではエコ・エフィシェンシーを向上させ、合理的な環境経
営を行うための1つのツールと捉えています。同制度を通じて、環境保全と経済
的成長が両立する活動を行い、企業としての社会的責任を果たしていきたいと考
えます。
4.コスト/効果の把握範囲
(1) コスト:
・ 環境活動における投資額および費用額(償却費を含む)に関して集計しました。*1)
(2) 効 果 :
・ 環境活動により企業として得た経済的効果(金額把握)*1)
・ 生産時において環境負荷を抑制した効果(物量把握)*1)
・ 製品使用時において環境負荷を抑制したと推定される効果(物量把握)*2)
*1):集計・分類項目は、「環境保全コストの把握及び公表に関するガイドライ
ン」('99/3環境庁公表)および「環境会計に関する実務者研究会」での検
討内容を参考にしました。
*2):標準使用条件下での抑制効果を当社独自の方式により推定しました。
5.集計の範囲
日立製作所単独ベースで、99年度 の実績について集計するとともに、過年度との比
較を行うため、98年度の実績についても集計しました。(日立製作所の事業所内で環境
負荷を一体管理している関連会社のデータも一部含んでいます。)
6.今後の環境会計への取り組み
・ 環境会計の対象範囲をグループ会社にも拡大していきます。
・ 環境保全効果把握項目・範囲の拡大を図ります。
7. 環境会計実績
(1)1999年度結果
・ 1999年度の結果は、費用:267.0億円、投資:67.6億円、効果(経済効果)
:41.6億円でした。
・ 費用全体に占める研究開発活動(111.4億円)が42%と、高い比率となっています。
研究開発活動の費用には、 財務上の研究開発費だけでなく、製品設計時の環境
配慮工数に関しても算出・計上しています。
・ 物量効果の内、エネルギー削減効果では、製品使用時の削減量(165百万kWh)が、
生産時の削減量(94百万kWh)に比べ、約2倍となりました。
(a)コスト (単位:億円)
費用 | 項 目 | 費用 | 主 な 内 容 |
(1)生産時の環境負荷抑制 | 97.7 | 環境負荷低減設備の維持管理費、減価償却費 |
(2)生産の上・下流での環境負荷抑制 | 18.0 | グリーン調達費用製品・包装の回収・再商品化・リサイクル費用 |
(3)管理活動 | 26.1 | 環境管理人件費、環境マネジメントシステム運用・維持費用 |
(4)研究開発活動 | 111.4 | 製品・製造工程環境負荷低減の研究開発及び製品設計費用 |
(5)社会的取り組み | 10.6 | 緑化・美化等の環境改善、PR・広報費用 |
(6)その他環境保全費用 | 3.3 | 環境関連の対策・拠出金課徴金 |
費 用 合 計 | 267.0 | |
投 資 合 計 | 67.6 | 省エネ設備等環境負荷低減設備の投資 |
(b)効果 (単位:億円)
経済効果 | 項 目 | 効果額 | 主 な 内 容 |
(1)実収入効果 | 11.0 | 廃棄物リサイクル売却益 |
(2)費用削減効果 | 30.6 | 省エネによる動力費削減廃棄物減による処理費削減 |
合 計 | 41.6 |
物量効果 | 項 目 | 削減量 | 世帯換算 | 主 な 内 容 |
(1)生産時のエネルギー使用量削減 | 94 百万kWh | 27 千戸 | 省エネ設備の導入によるエネルギー使用量削減 |
(2)生産時の廃棄物最終処分量削減 | 792 t | 3 千戸 | 分別、リサイクル等による最終処分量削減 |
(3)製品使用時のエネルギ-消費量削減 | 165 百万kWh | 48 千戸 | 当社製品のお客様使用時におけるエネルギ-消費量削減 |
注1) 設備投資の減価償却費およびその効果について
・設備投資の減価償却費は5年間の定額方式にて計算しています。
・設備投資に伴う効果も5年間計上しています。
注2) 経済効果の分類・項目について
(1)実収入効果……有価物の売却及び環境技術特許収入等の実収入がある効果
(2)費用削減効果…環境負荷低減活動に伴う電気料・廃棄物処理費等の経費削減
効果
(c) 環境効率(エコ・エフィシェンシー)
・環境負荷項目ごとに費用当りの削減量を表したものです。
項 目 | (A) 削減量 | (B) 削減費用 | (A)/(B) 環境負荷削減効率 |
エネルギー使用量 | 94百万kWh | 11.4 億円 | 8.2 百万kWh/億円 |
廃棄物最終処分量 | 792 t | 12.3 億円 | 64 t/億円 |
(d) 環境保全・配慮製品売上高
項 目 | 売上高(億円) | 売上高比率(%) |
環境保全製品 | 81 | 0.2 |
環境配慮製品 | 10,187 | 27 |
(注)・環境保全製品:廃棄物処理装置のように製品そのものが環境保全を
主目的として生産されている製品
・環境配慮製品:省エネ等環境負荷低減を配慮した製品
(当社独自基準により選定)
(2)環境会計の実績推移(単位:億円)
| 1998年度 | 1999年度 |
コスト | 費用 | 282.5 | 267.0 |
投資 | 56.5 | 67.6 |
効果(経済効果) | 36.9 | 41.6 |
以 上
|