日立製作所 半導体グループ(グループ長&CEO 石橋 正)は、このたび、16ビットマイコン
の最上位機種「H8Sシリーズ」のラインアップ強化として、車内LAN規格であるコントローラ
エリアネットワーク(CAN(注1))のインタフェース、および128kバイトのフラッシュメモリを
内蔵したF-ZTAT(TM)(注2)マイコン「H8S/2612F」を製品化し、平成12年6月30日からサンプ
ル出荷を開始します。
近年、車載機器やFA等の産業機器の制御分野においては、従来のシリアル通信から、高速
で信頼性の高いCANへの移行が進んでいます。また一方で、機器の開発期間短縮を図るため、
制御用のプログラムやデータの書き換えが容易なフラッシュメモリ内蔵マイコンの需要が高
まっています。
従来、当社は車載機器向けとして、CANインタフェースおよびフラッシュメモリを内蔵した
16ビットマイコン「H8S/2623F、2626F」、「H8S/2646F、2636F」を製品化してきました。
今回は、さらなるラインアップ強化を図るため、自動車の電動パワーステアリングのモータ制
御に必要なモータマネージメントタイマなどの周辺機能を1チップに内蔵した「H8S/2612F」
を製品化しました。
本製品は、0.35μm CMOSプロセスを採用し、当社の16ビットマイコンとしては最高性能の
「H8S/2600」CPUコアに、日立コントローラエリアネットワーク(HCAN(注3))を内蔵しており、
高速かつ信頼性の高い通信を実現できます。また、128kバイトの大容量フラッシュメモリを
内蔵し、システム出荷時の調整データの書き込みに対応するため、大/小のブロック(10ブロ
ック)に分割しての消去/書き込みを行うことが可能です。
さらに、従来はI/Oポート用に5V、内部ロジック用に3Vの2電源方式を採用していましたが、
本製品では降圧回路を内蔵することで5V単一電源を実現しました。内部ロジックは、降圧し
た電源を使用することで、低消費電力化、低ノイズ化を実現しています。
その他、割り込みによってDMA転送が可能なDTC(注4)、最大4逓倍のPLL(注5)発振回路、
シリアルコミュニケーションインタフェース、16ビットタイマ、ウォッチドックタイマ、10
ビットA/D変換器などの豊富な周辺機能を内蔵しています。
また、自動車の電動パワーステアリングや産業機器のインバータ等のモータ制御用に、6
相のノンオーバラップPWM波形を出力するモータマネージメントタイマを内蔵しました。CPU
やDTCとの併用で、高速、かつ高精度なモータ制御が可能となり、システムの高性能化を実
現します。
パッケージは、80ピンQFPを採用しました。車載機器向けとして初めてのパッケージであ
り、多様なユーザニーズに対応できます。
(注1)CAN:Controller Area Networkの略で、独 Robert Bosch GmbHが提唱している車
載用のネットワーク仕様。
(注2)F-ZTAT(TM)(Flexible Zero Turn Around Time)は日立製作所の商標です。
(注3)HCAN:Hitachi Controller Area Networkの略で、Bosch CAN Ver. 2.0B active
に準拠したFULL CAN対応/16メッセージバッファ。
(注4)DTC(Data Transfer Controller):割り込みによって起動され、CPUに代わってデー
タ転送が可能。転送情報を内部RAMに配置することで、チャネル数の増加を実現。
(注5)PLL(Phase Locked Loop):位相同期ループ。
■開発環境
ユーザのソフトウェア開発環境としては、「H8Sシリーズ」用のCコンパイラ、アセンブラ、
リンケージエディタ、ライブラリアン、シミュレータ、デバッガなどが、一般的に使用され
ているパソコンやワークステーション上で利用可能です。さらに、ハードウェアサポートと
して、リアルタイムシミュレータ「E6000」をはじめとした各種エミュレータを準備してい
ます。
■応用製品例
●自動車:電動パワーステアリング
●産業:FA、NC、デバイスネット
■価 格
製 品 名 | パッケージ | サンプル価格(円) |
H8S/2612F | HD64F2612FQFP-80 | 2,100 |
以 上
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