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Hitachi

社外取締役メッセージ

取締役会・指名委員会

グローバルトップクラスで構成する取締役会の有効性を維持・向上、将来のCEO候補者を手厚く育成

井原 勝美 取締役会議長 指名委員長 井原 勝美 取締役会議長 指名委員長

取締役会・指名委員会の役割多様なボードメンバーの確保とCEO候補者の育成が重要

 日立は指名委員会等設置会社で、社外取締役が、取締役会議長や三委員会の委員長を務めるなど、重責を担っています。現在の取締役構成は、スキルマップや出身地の地域的分布(日本、米国、欧州、インド)、ダイバーシティなどの観点から見ても非常にバランスがとれた、かつグローバルトップクラスのメンバーで構成されています。
 取締役会は、ガバナンスを主務とし、会社の経営にあたる執行役との機能分担がされています。その運営は、CEOが冒頭に会社の現状、優先課題、対応方針などについてレポートし、活発な意見交換で始まります。また、中期経営計画や単年度事業計画、大型M&A案件など、会社の重要案件については相当深く議論し、計画の質を高めています。一人一人が忖度なしに活発に意見交換し、議論を活性化させることで取締役会が有効に機能しており、例えば、執行側から提案されるM&A案件などは、議論の末、否決される場合もあります。
 一方、指名委員会には3つの役割があります。一つ目は取締役候補者の選定、二つ目はCEOのサクセッションプランの作成と提案、三つ目は将来のCEO候補者の育成です。日立の指名委員会は、選抜のみならず、育成に多大なエネルギーを費やしている点に特徴があります。指名委員は、次期、次々期CEO候補者のみならずその先の若手候補者に対しても面談や講演を通じて育成にかかわっています。

2022年度の取り組み・評価より実効性のある取締役会に向けた最適なメンバー選定

 2022年度は、新型コロナウイルス感染症も収束を見せ、取締役の活動も活発になり、事業所への訪問や会議外での執行役との意見交換などを通じて積極的な意思疎通が図られました。また、毎年、取締役会が適切に機能し成果を上げているか、会社の成長にどのように貢献しているかなどを取締役へのアンケートやインタビューによって評価・検証しており、2021年度に引き続いて高い実効性が確保されていることを確認しました。
 このような取締役会の実効性を維持・向上していくためには、適切な取締役メンバーを迎え入れることが肝要です。これは簡単なことではありません。日立では、全世界の可能性のある候補者リストを作成し、定期的に見直しアップデートしています。日立の多様な事業特性や注力しているデジタル領域を考慮に入れて、今はグローバル企業の経営経験やIT分野に知見のある候補者に優先順位をつけています。
 2022年度も指名委員は、次のリーダー候補の育成に多くの時間を費やしました。次期、次々期CEO候補者と1on1の面談を重ねリーダーとしての成長を確認し、またさらなる成長を促すチャレンジについて議論を重ねています。こうした活動を継続的に行うことによって、対象者の時系列的な成長を把握することが可能となります。また、もう一段若手からなる将来の幹部候補生、「Future50」の育成にもかかわっており、面談や講演の場を通じて、リーダーシップの強化、グローバルな視点や戦略性などを磨いています。このように将来のCEO候補者のパイプラインを整備し、質的充実を図ることが将来の日立にとってとても重要なことだと考えています。

2023年度の課題・展望日立カルチャーを継承し、成長に寄与するボードへ

 2023年度、優先度を上げて取り組む課題の一つ目は、次世代の取締役メンバーとCEOのサクセッションプランの検討継続です。しっかりとしたプロセスで人選をしていきたいと思います。二つ目は、2024中計をステークホルダーの期待に応えられるよう結果を出していくことです。2022年度は業績面で良い結果を出すことができましたが、2023年度も、種々のリスク要因にしっかり対応し、2024年度の中計達成につなげていき、それによって約束した株主還元を実現したいと思います。三つ目は、大きなポートフォリオの改革が一段落した今、これからはオーガニックな成長モードにシフトしていく時期を迎えています。そのためには、日立の多くのビジネスをグローバルに戦えるビジネスに転換していく必要があります。すでにそうなっている事業といまだこれからのビジネスが混在していますが、このtransformationに道筋をつけることが2023、2024年度の重要な課題だと認識しています。
 日立がサステナブルな成長モードへと移行した今、透明性、実効性のあるガバナンスの進化が引き続き求められます。日立の取締役と執行役とは、健全な緊張と共助を併せもつ関係性を維持し、うまく機能できており、それがこれまでの日立の変革や成長に大きく寄与してきました。私は取締役会議長および指名委員長として、今後メンバーが替わってもこうしたカルチャーを継承する取締役チームを作り上げ、継続的な日立の企業価値の向上を実現していきます。

報酬委員会

報酬は企業成長のエンジン、新たな報酬体系で企業価値成長力・グローバル競争力を高める

山本 高稔 報酬委員長 山本 高稔 報酬委員長

報酬委員会の役割客観性・透明性・公平性の確保が鍵を握る

 日立の中長期でありたい姿に対して望ましい取締役・執行役の報酬制度を検討し作り上げ、実行に移すことが報酬委員会の役割です。具体的には、取締役・執行役の報酬内容決定方針および、方針に基づく個人別の報酬内容を決定します。特に重要なことは、報酬決定プロセスに客観性・透明性・公平性を確保することです。これが説明責任と開示力を高めることになります。
 私は2022年6月に委員長を拝命しました。日立がさらにグローバル企業として成長するための報酬制度を再確認し、必要な改定を進めることが、報酬委員会の重要な役割の一つだと考えており、委員会メンバー、事務局の皆とともに、しっかり果たせるよう日々尽力しています。

2022年度の取り組み・評価新たな報酬体系を徹底議論し改定へ

 報酬は、企業が成長するための大事なエンジンです。One Hitachiでグローバルな成長を実現するためには、優秀な人財の確保とリテンションが不可欠で、そのためにはグローバル市場において日立の報酬の競争力を高める必要があります。日立が2024中計に掲げる「成長へのモードチェンジ」を実現し、今後の10年も成長し続けるための役員報酬制度はどうあるべきか、具体的には、現在の報酬水準は適切か、報酬が企業価値の成長に連動するものとなっているか、そして、欧米のグローバル企業と比較して競争力があるかの3つの観点を問題意識として調査し、徹底して議論しました。
 振り返ってみれば、東原取締役会長がCEOに就任した2016年から現在まで、日立のCEOの報酬はCAGR15%で増加しています。この報酬が会社の成長や市場に見合ったものなのかは常に意識していく必要があると考えています。実はこの間、TOPIX成長がCAGR6%であったのに対し、日立の株価はCAGR16%、時価総額では同17%で成長を続けていました。市場対比、グローバル競合対比での検証は非常に重要です。
 こうした調査結果をもとに、2022年度は、あるべき報酬制度についてより多くの時間をかけ議論を重ねました。そして2023年4月から、その内容を反映した報酬体系へ改定しました。
 改定に際しては、成長やイノベーションへの貢献に報いるPay-for-Performanceの徹底や、サステナブル経営の強化を通じた企業価値の向上に寄与する施策となることも重視しました。また、株主をはじめとしたステークホルダーと視座を合わせる余地のある制度設計、ストレッチの効いた予算制度としていくことも改定の目的の一つでした。
 サステナブル経営を掲げる企業として、サステナビリティ目標も評価項目として導入しています。私自身は、サステナブル経営を標榜できない、実践できない会社はグローバルでは通用せず、企業価値も高められないと考えています。資本市場と目線を合わせ、日立の成長を評価いただくには、3〜5年のスパン、つまりサステナブル経営を基盤とした中長期での企業価値を反映していく必要があります。今回の議論で形作った、企業価値成長との連動性、グローバル企業との競争力という観点は、今後誰が報酬委員となっても共通の マインドをもって臨めるよう、基本的な考え方として、また文化として根づかせていきたいと思います。
 まだ、日本においては、グローバルに通用する報酬体系を整えている会社は少ないと考えます。今回の改定内容は、日立がグローバル企業として報酬体系をリードしていると受け止めていただけるのではないかと考えています。

2023年度の課題・展望グローバル企業としての報酬制度の設計・運用を深化

 2023年度は、改定した報酬制度の社内理解を進め、浸透・実践していきます。全社業績や部門業績など、個別評価に適用する際には、外部の環境変化も踏まえた評価をどのように実践していくのか、シミュレーションした個別論点を整理・運用していくことになります。外国人執行役を含めて、しっかりとコミュニケーションをしていきます。
 また、日立の取締役は、12人のうち9人が社外取締役で構成されています。監督機能として企業経営の一角を担う社外取締役の報酬水準についても体系見直しの議論が必要だと考えています。日立がグローバル企業として成長を加速し時代の変化にも対応していくために、客観性・透明性・公平性を絶えず高いレベルで保持しながら、報酬委員長として、報酬制度の設計・運用に努めていきます。2024中計期間だけではない、さらなる次の成長を支え、企業価値創出シナリオのベースになる、それが成長エンジンである報酬体系のあるべき姿と考えています。

監査委員会

めざす成長と経営課題克服に貢献する監査を通じ、企業価値を向上

吉原 寛章 監査委員長 吉原 寛章 監査委員長

監査委員会の役割経営陣と切磋琢磨し、ステークホルダーの負託に応える

 監査委員会の役割は、取締役および執行役の職務執行に関する適法性・妥当性監査と会計監査を行うことで、ステークホルダーの負託に応えることです。日立は2009年3月期の大赤字に直面して以降、歴代経営陣がガバナンスの強化を進めてきました。その特徴としてTone at the Top、つまり経営陣が健全な成長のためにガバナンスが重要であることを強く認識していることがあります。それが率直で誠実な議論を促進しています。私は、監査委員長として、日立のめざす成長と経営課題の克服に貢献するために何ができるのかを、いつも肝に銘じて仕事をしています。
 日立のめざす「成長」は、短期的な売上・利益の成長だけを意味するのでなく、人財、組織カルチャー、環境価値など非財務的な要素を包含した中長期的に継続できるとても高いクオリティの健全な成長を意味しています。監査委員会が、経営陣と建設的な緊張感をもち、また、お互いの役割への理解と敬意を保ちながら、切磋琢磨していくことがバランスのとれた企業価値向上のために必要なことだと考えています。日立の三様監査*1と三角錐型監視体制*2を活用し、適切な緊張関係を確保しながらも、透明性と内部統制の実効性向上を図り、また相互にパフォーマンスを評価し改善の努力を続けています。

2022年度の取り組み・評価グローバルで実効性ある監査を優先度高く実行

 2022年度は、最近の大きな買収案件であったスイス・日立エナジーやイタリア・日立レールなどに足を運び、環境事業成長戦略などについて、直接現地の経営陣と意見交換を重ね、方向性や懸念事項の確認をしました。ほかにも、CIセクターの北米における買収会社3社とその持株会社を訪問し、PMIまたOne Hitachiイニシアティブの進捗状況の確認をするなど、監査委員である我々もグローバル展開におけるリスクの評価を現地で実践しています。
 ここ数年で、日立の大きな構造改革は一段落しましたが、事業ポートフォリオ変革を含む構造改革は、到達点のない、経営環境とともに刻々と進化するあるべき姿をめざすプロセスであり、企業にとって永続する命題と言えます。それが故に低収益事業への継続的な対応やより高レベルでのキャッシュ・フローおよびROICへのこだわり、また、DXやGXへの投資効果評価は、今後も重要であり続けます。特に、日立エナジーや鉄道事業の長期大規模受注プロジェクトにかかわる収益性確保・改善進捗のモニタリングも重要な役目の一つとして取り組んでいます。
 こうした優先事項がある一方、常に注視すべきこととして、安全衛生、品質保証、コンプライアンス、そしてそれらを徹底するカルチャーの醸成が挙げられます。日立はこれらにかかわる問題に対して、真摯に向き合って原因分析を行い、ガイドラインの見直し・周知など、正しい方向に努力を重ねています。監査委員会としても、これらの問題を継続して評価・支援していきます。

2023年度の課題・展望AIリスクの評価およびオペレーション効率化に優先度

 例年実施している監査項目のより一層の改善に加え、日立の事業ポートフォリオがOne Hitachiとしてシナジーを最大化できるよう、監査委員会としても貢献していきます。日立は多様なビジネスに携わっている大企業ですから、効率化による改善機会は広範にわたり、特にグローバルオペレーションの効率化は、喫緊の課題として取り組んでいます。
 昨今の重要テーマであるAIについては、すでに提供が進んでいる日立の制御や分析系のAIに、今後は生成AIを活用し、さらに新しいソリューションを提供しようとしています。日立の社内およびクライアントのために提供するAI活用システムにかかわるリスクマネジメントがとても重要になってきています。グローバルな法制化の流れも見極めながら、監査委員会もしっかりとモニタリングをします。
 今後も日立が健全な成長を続け、社会イノベーション事業のグローバルリーダーになるために、監査委員会は経営陣の職務執行の支援・監督を真摯に努めていきます。

*1 監査委員会、内部監査部門、会計監査人の三者の連携と綿密なコミュニケーションのもとに進められる監査体制
*2 監査の体制・機能強化として、現行の三様監査体制に加え、本社管理部門とも協働しながら重要リスク・課題を認識・評価し、解決に向けて監督・支援を行う、監査委員会を頂点とした監視体制