2003年7月2日
株式会社 日立製作所
国内初、行政機関や民間企業の基幹業務システムに適用可能な
「デジタルペン ソリューション」を提供開始
−デジタルペンで紙に記入した手書き情報を既存の業務システムで利用可能に−
株式会社日立製作所 情報・通信グループ(グループ長&CEO:古川一夫、以下、日立)は、国内で初めて、行政機関や民間企業などの組織向けに、「デジタルペン ソリューション」を体系化し、7月3日から提供開始します。
本ソリューションでは、データ振分けソフトウェアを中心にして、デジタルペン(*1)やデジタルペーパー(*2)などの製品群と組み合わせ、これらの導入から運用までをトータルに支援するソリューションを提供します。これにより、ペンで紙に書いた情報を既存の業務システムでそのまま即時に利用することができます。例えば行政機関では、職員は住民による手書きの申請情報をコンピュータに再入力する手間が省け、業務の効率化を図ることができます。また住民は、ペンと紙による従来通りの記入手順を変更することなく手続きを行えます。本ソリューションは、このほかにも、銀行での窓口業務や屋外での現場調査、水道やガスなどの点検業務などさまざまな業務に利用可能です。
- *1
- デジタルペン:スウェーデンのアノト社が開発したアノト・ファンクショナリティ対応の製品。デジタルペーパーに書き込んだ情報を取得するペン。データの転送方法としては、現在Bluetooth TM通信やUSB接続がある。同製品は、アノト社のペンパートナー企業によって、おのおののブランドで製造・発売される。
- *2
- デジタルペーパー:
アノト社が開発したアノト・ファンクショナリティ対応の製品。カーボンインクにより特殊なドットパターンを印刷した専用紙。同製品は、アノト社の紙・印刷パートナー企業によって、おのおののブランドで製造・発売される。
従来のデジタルペンは、主に個人利用向けに開発されたものであり、ペンで書いた文字や絵のイメージデータをパソコンに取り込み、メモやメールの添付データとして利用するのが主流でした。デジタルペンを組織内の業務に適用する場合、記入された情報と該当する業務システムを、効率的に連携することが求められていました。本ソリューションでは、用紙の種類を判別して記載された内容を認識し、文字をテキストデータに変換して自動的に業務システムにつなげることができます。そのため、さまざまな帳票を取扱う、行政機関や民間企業の業務に適用できます。
「デジタルペン ソリューション」の特長
1. 行政機関や企業などの組織の基幹業務システムに適用可能
本ソリューションの中核となる、データ振分けソフトウェアのEPLS補足(*3)(Enterprise Paper Look-up Service)やASH基盤補足(*4)(Application Service Handler)を提供します。これらにより、業務システムと用紙の対応管理や、文字認識機能による手書き情報からテキストデータへの変換、該当する業務システムへのデータ振分けなどが可能となるため、行政機関などの基幹業務システムで活用できます。
- *3
- EPLS(Enterprise Paper Look-up Service):アノト社と日立で共同開発した製品。ペンから送られたデータを、対応する業務システムに振分けるソフトウェア。すべてのデジタルペンおよびデジタルペーパーに割り振られたIDと業務システムに対応したASH基盤のURLアドレスを登録管理する。
- *4
- ASH基盤(Application Service Handler):日立が開発した製品。デジタルペンから転送された手書き情報を業務システムに引き継ぐためのデータ処理を行うソフトウェア。主な機能のひとつとして、文字認識機能がある。
2. ペン内に情報を保存できるため、屋外の業務でも利用可能
A4サイズ40枚程度の情報を、ペンに内蔵されているメモリに一時的に保存できます。これにより、パソコンを持ち運べない屋外での現場調査や、水道、ガスなどの点検業務などにも適用できます。記入した情報は、作業が終了した後でまとめて送ることができます。
3. 業務量や業務システムの規模に合わせた導入が可能
本ソリューションでは、スタンドアローンモデルから50人、500人、3,000人規模向けのサーバモデルまで幅広いラインナップがあり、業務量や業務システムの規模に合わせた導入が可能です。また、処理量の伸びに合わせたシステム拡張も容易に行えます。
今後は、文書管理や電子申請などの、公共向けの業務パッケージソフトウェアとの連携を図り、電子政府、電子自治体ソリューションに適用していきます。また、金融、流通や教育などの分野にも適用範囲を拡大して行く予定です。さらに、海外についてもパートナー企業と連携し、アジアを中心とした販売も視野に入れていきます。
なお、本ソリューションは、7月22日、23日に東京国際フォーラムで開催する「HITACHI-ITコンベンション2003」で紹介する予定です。
「デジタルペン ソリューション」体系
システム価格
50人モデル例 550万円(ペン50本、紙5種類、EPLS1式、ASH1式)
販売目標
2005年までに5億円
「デジタルペン ソリューション」ホームページ (7月3日オープン)
他社所有商標に関する表示
- Bluetoothは、アメリカ Bluetooth SIG,Inc.の登録商標です。
- その他、本リリースに記載されている会社名、製品名は、各社の登録商標または商標です。
添付資料
「デジタルペン ソリューション」 製品説明資料
1. デジタルペン ソリューション
「デジタルペン ソリューション」利用の流れは、以下の図のようになります。
図1:デジタルペン ソリューションの構成
- *1
- EPLS:Enterprise Paper Look-up Service
- *2
- ASH基盤:Application Service Handler
2. 「デジタルペン ソリューション」を構成する製品群
- (1) デジタルペン
- デジタルペーパーに書き込んだ情報を取得するペン(図2)です。ペンにはカメラ(A)、画像処理装置(B)、メモリ(C)、インクカートリッジ(通常のボールペンと同様のインク)、筆圧センサー(D)、およびバッテリー(E)が内蔵されています。記述時に筆圧センサーが作動し、カメラがデジタルペーパーのドットパターンを読み込むと、画像処理装置によって、ペン先の位置情報と、紙ごとに割り振られた固有のIDが取得されます。ペンの軌跡以外に、書いた順序、速度、筆圧、相対的な時間情報なども取得することができます。取得した筆跡ストローク情報はメモリ内に蓄積され、ペンのアクセスポイントへ転送されます。データの転送方法としては、現在、USB接続やBluetooth TM通信があります。
なお、この製品は、アノト社が開発しました。
図2:デジタルペンの構造(左:Bluetooth TM搭載のペン、右:USB接続のペン)
- (2) デジタルペーパー
- カーボンインクにより特殊なドットパターンを印刷した専用紙のことです(図3のA)。ドットは、約0.3mm間隔で格子状に配置されており、それぞれが微妙に上下左右にずれて配置されています(図3のC)。
6×6ドット分の面積(1.8mm×1.8mm)を一単位として解釈すると(図3のB)、36個のドットにつき、それぞれ上下左右4通りの組み合わせが考えられるので、理論上そのパターンは4の36乗通りの組み合わせが考えられます。この6×6ドットの組み合わせを面積に換算すると、非常に膨大な範囲を網羅することとなります。ドットパターンは、一単位ごとにX、Y座標が割り当てられているため、個々のデジタルペーパー上でのドットパターンのX、Y座標から、全ペーパー上での絶対位置を判別できます。それぞれのデジタルペーパーは固有のIDが割り振られているため識別が可能です。用途に応じた帳票をこの用紙上にレイアウトして使用します。
なお、この製品は、アノト社が開発しました。
図3:デジタルペン対応用紙の仕組み
- (3) EPLS (EPLS = Enterprise Paper Look-up Service)
- 日立製作所とスウェーデンのアノト社で共同開発した製品です。
ペンから送られてきたデータを、対応する業務システムに振り分けるサーバです。EPLSには、すべてのデジタルペンおよびデジタルペーパーに割り振られたIDと業務システムに対応したASH基盤のURLを登録管理する機能があります。
- (4) ASH基盤 (ASH = Application Service Handler)
- 日立製作所が独自に開発した製品です。
デジタルペンから送信されてきたデータに処理を施し、次の業務システムに引き継ぐためのソフトウェアです。前処理の一つとして、文字認識機能が挙げられます。これにより、手書き入力データを直接テキストデータに変換できるため、データをそのまま業務システムと連携させることが可能です。従来のように、人の手を介する必要がありません。
以上